社会人の場合、留学を検討するにあたって真っ先に浮かぶのは「仕事はどうしよう」という不安でしょう。今の仕事を退職してまで留学に行く価値はあるのか、行って後悔したくないなど心配事が次々と浮かんでは消え、なかなか決断できない人は多いのではないでしょうか。
確かに、社会人の留学は学生の頃と比べ、いろいろなハードルがあります。
しかし、自分なりにきちんと意志を持って計画を立てれば、スキルアップやキャリアアップに繋がる留学を実現できるはずです。
今回の記事では、実際に働き始めて10年目で留学を決意し渡豪した筆者の経験を交えながら、社会人留学の成功のコツをお伝えしていきます。
[目次]
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まずは社会人が留学するにあたって、どのような選択肢があるのか確認しておきましょう。留学を通して何を得たいのか、何を実現したいのかを考え、自分に合った方法を選べるといいですね。
社会人留学には細かく見ていくといろいろな方法がありますが、大きく分けると「仕事を辞めて行く留学」と「働きながら行く留学」の2種類です。前者は長期留学、後者は短期留学に分類されます。それぞれ見ていきましょう。
まずは長期にわたって海外渡航する留学方法です。具体的には下記の4つがあります。
海外の大学、もしくは大学院に正規留学する方法です。
大学なら3~4年、大学院なら1~2年の留学になります。日本国内ですでに大学を卒業している場合、基本的には大学院へ進学します。その際、大学での専攻と大学院での専攻は必ずしも一致しなくても大丈夫です。
現に、私の大学時代の専攻は歴史学でしたが、オーストラリアの大学院ではMaster’s of Education、すなわち教育学を学んでいます。
ワーキングホリデーは名前の通り、働きながら海外滞在ができるビザです。国によって制度に若干の違いはありますが、基本的には就労だけでなく就学も可能で、海外でいろいろな体験がしたい人にはぴったりの留学方法です。
ただし、ワーホリの場合は年齢制限があり、ほとんどが30または31歳までの期間限定で、それをすぎると申請ができません。
大学や大学院ではなく、現地の語学学校に通う方法です。英語圏の、特に大きな都市であれば大抵は英語専門の語学学校があるので、自分の行きたい国の中から選べるでしょう。
学生ビザでも国によっては働けることもあるので、現地の生活を体験しながら英語の勉強ができます。
海外で就労体験がしたいなら、インターンシップに参加するのもひとつの手段です。英語力や職歴を問わず参加できるものもあるので、自分の興味に合わせて参加できるものを探してみましょう。短期インターンシップは基本無給ですが、長期なら有給のことが多いです。
続いて、会社を辞めずに海外へ行く方法です。1週間~1カ月程度の留学なので、大型連休や有給を活用すれば、会社を辞める必要はありません。
現地の語学学校へ、2週間~1カ月程度の短期間のみ通う方法です。語学学校は自分で通学期間を選べることがほとんどなので、こういった短期留学もできます。有給などを組み合わせれば、会社を退職しなくても語学留学に行けますよ。
短期の場合働くことはできませんが、代わりにボランティアプログラムに参加するという方法もあります。公園や森林保護区のゴミ拾いをしたり、子供たちに日本語を教えたり、いろいろなプログラムがあります。
気軽に現地での生活を体験したいならホームステイはいかがでしょうか。ホテルでの宿泊とは一味違って文化交流の側面もあり、例え短期であってもさまざまな発見や体験をすることができます。
留学の形態はなんであれ、行くからにはスキルアップを目指したい人も多いはず。特に社会人の場合、「良い経験になった」だけで終わらせてしまっては十分な自己アピールになりません。
留学を通して、下記のようなスキルを身に着けて転職活動やキャリアアップにつなげたいですね。
語学留学の場合はもちろん、英語力アップを目標に掲げる人は多いでしょう。語学学校で毎日授業を受ける中で、一般英語やビジネス英語のレベルアップが目指せます。
また、ワーホリやボランティアで留学する場合にも、現地の人と触れ合う中で英語力を伸ばす機会はたくさんあります。特にアルバイトをするなら、接客をしたりネイティブに混ざって働いたりする中で自然とリスニング力、スピーキング力が鍛えられます。
学校では習わないような言い回しやスラングを耳にする機会も多くあり、より「生きた英語」を学べるでしょう。
留学先では、自分のことはすべて自己管理しなければなりません。雇用契約書を書いたり、賃貸に関する手続きをしたり、煩雑な作業もすべて自分でやる必要があります。
しかもすべて英語での作業になるので、ときにはより詳しい人に頼りたくなるときもあるでしょう。友人やエージェントに相談するときなど、自分の聞きたいことや言いたいことを相手に分かってもらうためには、英語力だけでなくコミュニケーション能力も必要です。
言い回しを変えてみたり、聞き方を変えてみたり、いろいろな方法で相手と意思疎通を図る中でコミュニケーション能力も磨かれていくでしょう。
行く場所がどこであれ、留学先では日本人以外の人と触れ合う機会を多く持つことになります。
さまざまなバックグラウンドを持った人と出会うので、ときにはカルチャーショックを受けることもあるでしょう。良いギャップもあれば、「信じられない!」と憤慨するような出来事に遭遇することもあります。
そうして現地での生活をこなしていく中で、日本で生活するだけでは身につけにくい、グローバルな視点やメンタルを構築することができます。
社会人留学は楽しいことばかりではなく、もちろんリスクもあります。きちんとそのメリットとデメリットを理解し、計画を立てるようにしましょう。
社会人留学のメリットは、大きく分けて下記の2つです。
一番のメリットは英語力やコミュニケーション能力など、さまざまな「スキル」を磨けることでしょう。そうして得た新たな武器を基に、転職活動ではキャリアアップが図れるはずです。
ただし、ただ漫然と過ごしているだけでは思ったようなスキルが得られないこともあります。「何を」「どれくらい」伸ばしたいのか意識して、留学の日々を過ごすようにしましょう。
日本とは違う文化に触れる中で、自分の価値観が変わっていくことがあります。例えば私の場合、日本では「〇歳までに△△をしなくては」などといった年齢に関するプレッシャーを無意識のうちに感じてしまう機会が少なくありませんでした。
しかし、ここオーストラリアではそもそも年齢に関する話題が出ることが稀です。年齢はただの数字でしかなく、何をするにも遅すぎることはない、と思うようになりました。
このような価値観の変化を経験する中で、自分の選択肢が広がることもあります。
一方で、デメリットもあります。具体的に計画を立てる前に、知っておきましょう。
長期でも短期でも、留学にはお金がかかります。長くなればなるほど割安になる傾向にはありますが、まとまったお金が必要なことには変わりありません。
ビザによっては現地就労ができないこともあるので、貯金を切り崩す必要があり、不安になる人も多いでしょう。
長期の場合、その期間は職歴に空白ができることになります。転職活動の際には、必ずといっていいほど「その期間に何をしていたのか?」と聞かれるでしょう。
留学に行ったこと、そこで得た経験やスキルについてしっかりと自分の言葉で語ることができないと、「ただ遊びに行っただけでは?」と勘違いされてしまうこともあります。
それを避けるためにも、自分なりに意志を持って計画を立てる必要があります。
ここでは、社会人留学におすすめの国をご紹介します。もちろん、他にも選択肢はありますが下記の3つは特に人気が高くおすすめです。
オーストラリアがおすすめの理由としては、まず治安の良さが挙げられます。「Institute for Economics and Peace」の発表している世界平和指数ランキングでは、オーストラリアは163カ国中22位でした。(※1)日本の9位に比べれば劣りますが、世界的に見れば治安の良い国のひとつに数えられます。
また、移民が多くみな「外国人」に慣れているため、互いの文化や慣習を尊重し合う風潮があります。おおらかで穏やかな国民性なので、人種による居心地の悪さを感じることはありません。
さらに街にはアジア系のスーパーやレストランも多く、そういった面でも暮らしやすいのはオーストラリアの大きな魅力です。
オーストラリアのより詳しい情報はこちらからご覧いただけます。
オーストラリア留学ガイド
イギリスは古くから日本人に人気の留学先のひとつです。特にロンドンはファッションや流行の発信地として知られ、英語だけでなくアートを学ぶために留学をする人も多くいます。美術館、博物館も多いのでさまざまな刺激に触れながら留学を楽しみたい人にはぴったりでしょう。
また、ヨーロッパ諸国へのアクセスも良く、ちょっとした休みを利用してヨーロッパ旅行ができるのもイギリスの魅力です。例えば、イギリスとフランスを結ぶ高速鉄道「ユーロスター」を使えばパリまで2時間ちょっとで到着します。
留学のついでにいろいろな国を見てみたいという人に特におすすめです。
イギリスのより詳しい情報はこちらからご覧いただけます。
イギリス留学ガイド
フィリピンは短期留学先として人気です。人気の理由はその安さ。物価が日本の1/5~1/3と言われており、語学学校の費用や滞在費が他の国と比べると非常に安く済みます。日本から直行便で4時間ほどで行けることもあり、気軽に留学を検討できるでしょう。
特に、ワーホリや長期留学を前にフィリピンで英語を学ぶ人は多いです。フィリピンである程度の英語力を身に着けてから渡航することで、英語学習にかける費用を抑えることがその狙いです。
フィリピンのより詳しい情報はこちらからご覧いただけます。
フィリピン留学ガイド
英語学習に関する費用の話が出ましたが、留学にかかるお金は他にもいろいろあります。ここでは語学留学、大学院留学、ワーキングホリデーの費用についてそれぞれ説明していきます。いずれの場合も、学校に通う場合には学費と生活費がかかります。
まず、語学留学の場合の費用を見ていきましょう。比較的費用の安いフィリピンの場合、1週間の短期留学をするなら費用は17.1万円です。これには食費や渡航費なども含まれます。
対してカナダの場合は26.5万円と、10万円近くの差があります。オーストラリアの場合は27.7万円と、カナダよりさらに高額です。オーストラリアは物価の高い国であるため、他の国に比べて何かと高くなりやすいのは覚えておきましょう。
大学院留学の場合、短くても1年は現地に滞在することになります。そのため、学費も生活費もまとまった金額が必要になります。
例えばオーストラリアの大学院の場合、1年分の学費は220万円ほどです。生活費は約150万円かかるので、合わせて370万円が目安です。ただし、メルボルンやシドニーといった都心部の学校に通うとなると学費も生活費ももう少し上がる傾向にあります。
アメリカの場合は州立大学かそれとも私立大学かで大きく変わります。仮に私立大学に行った場合、1年間の学費は350万円程度が平均値です。ここに生活費220万円を足すと、570万円かかることになります。
なお、どこの大学院でも選ぶ専攻によって学費は大きく変わるので、自分のコースをよく確認しましょう。
ワーホリで行くなら、語学学校に通うか否かで費用は大きく変わります。
仮に、オーストラリアでワーホリビザを使って1年間語学学校へ行き続けた場合、費用は541万円程度になります。語学学校へ行かなければ学費約186万円が浮くので、1年間で355万円ほどです。
カナダなら語学学校へ行く場合は約501万円、通わない場合は約326万円と、オーストラリアよりやや安くなります。
イギリスはオーストラリアよりも高く、年間で約585万円かかります。語学学校に通わない場合でも年間約368万円と、3ヶ国の中で最も高くなっています。
ただし、ワーホリの場合は現地で就労ができるので、必ずしもこの金額を事前に準備しておく必要はありません。
ここまで、社会人留学のメリットやデメリット、費用などについて詳しく見てきました。記事を読んでいる中で、より具体的に留学へのイメージが湧いてきている人もいるのではないでしょうか。もし実際に留学を検討しようと思うなら、下記の点に注意しながら計画を進めてください。
事務的な準備を進めるのと並行して、英語の学習もするようにしましょう。事前にある程度英語力を身に着けておくことで、現地到着後スムーズに生活の基盤を整えられます。
また、語学学校では最初にクラス分けテストがあり、初級~中級~上級に分けられます。初級ではアルファベットからやり直し、ということもあるので、よりレベルの高い英語学習をしたいなら中級以上を目指しましょう。
もちろん、現地に行ってから英語力を磨く機会はたくさんあります。しかし、国内にいるうちに英語力を磨いておくことで、より充実した留学を実現しやすくなります。
金銭面で不安を抱えているなら、自分が応募できる奨学金がないか確認してみましょう。調べてみると、実は社会人向けの奨学金はいろいろとあります。
専攻や年齢に制限があるものも少なくないですが、中には誰でも応募可能な奨学金もあります。たとえばIELTS奨学金はIELTSを受検し、かつその結果を大学もしくは大学院入学の英語力証明に使用した人なら誰でも申し込み可能です。
他にも各自治体が在住者、在勤者向けに奨学金の給付を行っている場合もあります。下記ページで詳細を解説していますので、気になる方はぜひ確認してみてください。
【留学向け奨学金】社会人が応募できる返済不要の給付型奨学金まとめ
社会人の場合、帰国後には転職活動という一大イベントが待っています。留学をするなら、そのときに役立つスキルや経験を得られるように計画を練る必要があります。
どんな仕事がしたいのか、そのためにどんなスキルを身に着けるべきなのかをよく考えましょう。会社を辞めずに行く場合には、今の仕事に直結する経験や知識を吸収することを心がけるべきといえます。
また、社会人ともなると結婚などライフステージの変化を経験することもあります。長期留学に行くなら、そういったライフイベントも重要な検討材料になりますので、パートナーや家族とよく話し合う必要があるでしょう。
最後に、社会人留学に関してよく聞かれる質問とその答えをまとめていきます。これを読めば、留学に関する悩みや不安が解消されて、前向きに留学を検討できるのではないでしょうか。
留学の方法によります。例えば大学、大学院の場合は入学条件に一定以上の英語力が含まれるので、英語が話せないとまず入学させてもらえません。大学やコースによって求められる英語力は違いますが、最低でもIELTS6.0(英検1級以上)の英語力は必須です。
一方、語学留学やワーホリの場合はそういった決まりがないので、英語力がなくても留学を実現できます。
「逃げ」と言われてしまう人の特徴として、留学の前後で大きな変化が見られないことが挙げられます。
特段英語力が上がったわけでもなく、突出したスキルを身につけて帰ってきたわけでもないとなると、周りに「何のために留学に行ったの?」と思われてしまっても仕方ないでしょう。
それを避けるためにも、自分なりに目標をしっかり持ち、それを達成するための努力が必要です。
社会人にとって、留学は目的ではなく自己実現のための手段です。留学を通して「どんな自分になりたいのか」は常に意識するようにしましょう。まだ不安な方は、下記の記事も参考にしてみてください。
社会人の留学を「逃げ」と言わせない。留学で新たなキャリアを切り開くには?
仕事辞めて海外留学しても大丈夫?成功のコツはキャリアや再就職への不安と対策を知っておくこと
留学で起きやすい後悔3選!後悔しないために必要な対策や心がけまとめ
実にさまざまです。例えば日系企業の海外営業担当や貿易部門など、身に着けた英語力を存分に活かせる職場はいろいろあります。大企業だけでなく、中小企業の中にも海外との取引がある会社は少なくないので、可能性はいろいろあるでしょう。
日系企業に限らず、外資系にも視野を広げてみればたくさんのチャンスがあるはずです。また、留学に行ったからといって必ずしも英語を使う職場に固執する必要はありません。自分がやりたいことが実現できる会社を探してみましょう。
自分軸をしっかり持つことです。社会人、特に30~40代の場合はそれまで築いてきたキャリアや職場での地位があるでしょうから、「それを投げ捨ててまで留学すべきか?」と迷いが生まれてしまう人もいるでしょう。
また、周囲にそういったことを言われることもあります。しかし、自分なりに留学をする理由がはっきりとあればそういった声は気にならなくなるはずです。自分軸を持ち、自分なりの留学を考えていきましょう。
今回の記事では、社会人留学について詳しく見てきました。長期留学、短期留学、など留学の方法はいろいろありますので、自分の目標や予算に合わせて最適のものを選べるといいですね。
また、留学にはメリットばかりではなくデメリットもありますので、計画の際にはそれをどう扱うかを考える必要もあります。不安な点があるなら、ひとつひとつ丁寧に検証し、どう解決するかを考えましょう。
そういった準備も含め、留学を通してスキルアップが実現できれば、帰国後のキャリア形成にさまざまな可能性をもたらしてくれるはずです。
語学留学を具体的に検討するなら、まずは留学を実現するまでの流れを確認しましょう!留学準備では大まかに5つのステップがあります。
留学を思い立ったら、まずは渡航時期、期間、渡航先の目星をつけてみてください。
いつ、どれほどの期間、どんな国で留学するかイメージが持てると具体的な計画を立てやすくなります。
留学へ行くとなると考えることはたくさんあります。
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