海外就職に興味がある方であれば、一度はアメリカンドリームを夢見たことがある方も多いのではないでしょうか?
アメリカで就職と聞くと中々ハードルが高そうに感じますが、実際のところどうなのでしょうか。今回は、アメリカの就職事情を徹底解説したいと思います。
なお、アメリカでのインターンシップについての全般的な情報は下のページでまとめているので、具体的な検討を進めたい方はチェックしてみてください。
アメリカのインターンシップ制度とは?メリット、求人の探し方など解説します
[目次]
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アメリカと日本の就職事情の違いを端的に言えば、前者は「職種」を軸に、後者は「組織」を軸に、キャリアを形成していくという点でしょうか。
日本では、新卒採用で入社した企業で、数年ごとの人事異動を経験し、最終的には、その組織をマネジメントできるジェネラリストになる、いわば「組織」のプロになることが要求されます。
一方、アメリカでは、日本のような画一的な「就職活動・新卒採用・人事異動」といった仕組みが、存在しません。各々の組織は、職種(=Job Title)を指定し、求人の募集をかけます。
応募者は、求人情報(=Job Offer)に記載されている業務内容(=Job description)と応募条件(=Requirement)が、自身の専門性や関心に合致したら応募します。
そのため、常に自分の関心やできることを明確にし、それらを満たす「職種」を軸に、自分の力でキャリアをデザインしていくことが求められるのです。
アメリカで職を得ることは容易ではありません。トランプ大統領が、自国民の雇用の確保を優先する政策を進めているため、外国人に対する雇用の敷居は以前にも増して高くなっています。
アメリカで仕事を得るために求められる条件としては、以下が考えられます。
一にも二にも重要なのが、語学(英語)力でしょう。
アメリカには、世界各国から優秀な人材が仕事を求め集まってきます。仕事の基本であるコミュニケーション、すなわち英語ができるのは大前提で、その上で優秀な人材間で熾烈な競争が繰り広げられます。
そのため、語学力に難を抱えがちな日本人は不利と言わざるを得ません。
語学資格は、英語力を示す一基準には成り得ますが、どれだけ高いスコアを保持していても、実際の場面で英語を活用できなければ、意味がありません。
アメリカの大学院への入学基準が、TOEFL iBT 90-100〜(TOEIC870〜点、IELTS7.0〜)となっています。これらの点数が、「ネイティブと問題なく流暢にコミュニケーションをとれる」一つの目安かもしれません。
もちろん、これ以下のスコアしか保有していなくても、他に魅力的な経験や能力を有していれば、採用対象となることは十分に有り得ます。
全く英語を要しない(日本語のみでOK)の求人等も稀にはあります。後で詳しく紹介しますが、英語に自信のない方は、これらの求人を検討することをおすすめします。
英語に苦手意識がある場合、それをカバーするような、職務経験が求められます。志望する業界や職種と同等の業務経験が過去にあることはもちろん、マネジメント経験やプロジェクトのリーダー経験など、チームを率いて顕著な成果を出した経験などは、どの組織でも好まれます。
日本人である我々がどこで働くにしろ共通して求められるのは、異文化適応能力(Multi-cultural adaptability)や自主性(Self-motivated, Self-starter, Self-learning person )、問題解決スキル(Problem-solving skills)といった特性かと思います。
こういった特性をアピールできる過去の職務エピソードがあると良いですね。
アメリカの大学の卒業者でも未経験・新卒で就職するのは、至難の技です。過去にアピールできるような職務経験がない場合は、後で紹介するインターンシップ制度を利用することを強くおすすめします。
その他にも、ITや語学など、他の人にはない希少なスキルを保有している場合、そのスキルが評価されるような求人への採用率は高くなります。
特に、アメリカでは、英語に加えスペイン語やフランス語など西欧圏の言語に流暢な人々が大勢います。彼らと互角にやっていくには、一つでも抜きん出ているスキルがあるとより優位になります。
アメリカで就労するには、アメリカ在留資格が必要になります。在留資格を得るには、大きく分けてビザか移住・永住権(グリーンカード)を取得することが必要です。
ビザに関しては、どのような立場でアメリカで仕事をするかにより、ビザの種類が変わってきます。日本の企業に雇用され、米国に駐在する場合(Eビザ、Lビザなど)、米国の現地企業に直接雇用される場合(Hビザ)、米国法人設立準備の場合(Bビザ)、インターンシップや特別なプログラムにする場合(Jビザ)など。
「就労」以外の米国滞在の目的(例えば、米国籍者の婚約者・配偶者になるなど)がなければ、就労先がビザのスポンサーになってくれなければなりません。求人情報を確認する際は、その点を必ず確認するようにしましょう。
移住・永住権(グリーンカード)については、「就労」だけを目的とした渡米の場合、すぐに取得することはできません。まずは、EビザやLビザで一定期間(約1〜5年)米国にて就労することにより、移住・永住権(グリーンカード)への切り替えが可能となってきます。
移住・永住権(グリーンカード)は、その他にも米国籍・永住権保有者の直近親族となる場合や米国への投資をすることにより取得することも可能です。
既に何らかの理由により、移住・永住権(グリーンカード)を保有している場合、就労先がビザのスポンサーになってくれるかということを気にする必要がないので、就労先の選択肢は拡がります。
アメリカで日本人向けに多い求人となると、2つのタイプが考えられます。一つ目は、日本人を雇用することが、雇用側にとってメリットとなるポジション。やはり、日本語を使用する、日本の文化・制度に精通しているなど、対日本やアジアと関わりのある仕事は、日本人を求めているケースが多いです。
対日本にセールスマーケティングやマーケットリサーチを展開したい米法人のポジション。逆に、対アメリカ向けに日本の製品やサービスを普及したい日系企業の現地法人ポジション。さらに、米国在住/訪問者向けの日本人を対象とした情報、製品、サービスに関する求人も多くあります。
二つ目は、日本人であることが良くも悪くも影響しない、つまり国籍関係なく「実力主義」の業界の求人。近年増大している、グローバル企業やエンジニア、シンクタンクなどのポジションは、これに該当するでしょう。
以下、日本人向けに多い求人事例をまとめてみました。★は、英語が比較的に苦手な方でも、挑戦しやすいかと思います。
どのような仕事をしたいか、どのような環境で暮らしたいかにより、おすすめする地域も異なります。一般的に、多くの日系企業が進出し、比較的大きな日系経済圏が出来上がっている地域が、初心者にとってはハードルが低いかと思います。
日本人人口全米第1位で日系求人も多い。一年を通じて温暖な気候なのも良い。
日本人のアメリカ就職先で、最も人気。全米一の経済圏で挑戦してみたい方はオススメ。
ロサンゼルスに次ぐ、西部の人気都市。IT産業の中心地なので、IT系の方にはチャンスが多い。
日系企業の多くが、人材獲得のために、日系の人材紹介会社(エージェント)を利用しています。どういった仕事が自分に向いているかわからない、数々の求人を自力で検索するのは大変、未公開の求人に出会いたい。こういった方々は、まずエージェントに登録してみるのが効果的です。
エージェントに登録することで、キャリアカウンセラーに就職活動について相談でき、アメリカの就活事情に詳しくなることができます。エージェントにより、得意な業界や地域があるので、複数のエージェントに登録することをおすすめします。
また、まずは日本で勤務し、ゆくゆくはアメリカで勤務するチャンスが欲しいのか、それとも、すぐにでもアメリカで働きたいかで、おすすめエージェントも変わってきます。
既に自分のやりたい仕事が決まっている場合は、直接志望する会社の採用担当に連絡を取り、話を聞きに行ってみるのも良いかもしれません。
タイムリーに自分に合う求人を募集していなくても、同業他社の求人を紹介してもらえたり、将来的な繋がりの可能性を模索できるかもしれません。
アメリカでは、SNSも重要なリクルートツールの一つになっています。履歴書には、FacebookやTwitter、Likedinなどのアカウントを記載することも一般的で、いまやSNSは仕事の依頼や自己ブランディングをする標準ツールとなっています。
アメリカで就労経験がない、過去に類似の職務経験がない場合、どうすれば良いでしょうか?
米国では、多くの企業や組織・団体が、優秀な人材のリクルート、労働力確保の一環で「インターンシップ」制度を設けています。インターンシップでは、受入れ側が提供する様々な教育や業務を体験することにより、インターン生は履歴書に記載できる経歴や、実際の雇用に繋がるコネクションを築いていくことができます。
実際、アメリカの大学生の大半が、このようなインターンシップの機会を利用して、職を手にしていきます。運が良ければ、インターンをした企業・組織で、そのまま採用ということも有り得ますので、ぜひ多くの日本人に知っていただきたいチャンスの一つです。
アメリカでのインターンシップ体験談はこちら↓
アメリカでの就職選考の流れは、第一に書類選考、第二に面接選考という流れが多いです。各々の概要は下記の通りです。
まず、第一選考ステップとして、書類選考があります。メールにて、担当者宛にカバーレターとレジュメ、必要であれば、大学の成績証明書や資格証明書などその他の必要書類も併せて提出します。
人気の求人の場合、一つの求人につき、何千通もの応募があり、採用担当者は応募書類に目を通すだけで大変です。よって、目に入りやすい、記憶に残りやすい書類の作成を心掛けることは大切です。
自分はどういう人物で、なぜこの求人に関心を持ったのか、採用された場合、どのように組織に貢献できるのか、といったことをA41枚程度で軽く説明します。いわば採用担当者への自己紹介のようなものです。
住所、コンタクトなど基本的な情報、教育歴、職歴、資格・スキルなどをA41-2枚程度にまとめたものです。職歴をどれだけ詳細に記載するかは、場合によるなので、募集要項を確認しましょう。
アメリカでは、人種や性別、年齢などを理由に、雇用差別をしないという考え方のもと、通常レジュメに個人写真や生年月日(年齢)、性別、国籍といった情報を記載することはしません。
書類選考を通過した候補者は、次段階の選考ステップである面接選考(Interview)に進みます。
面接では、採用側が候補者のカバーレターやレジュメの内容を深く掘り下げるとともに、互いの興味・関心が一致しているか、組織との相性を見極めます。面接官に、一緒に働きたいと思ってもらえるよう、その組織で活躍できる可能性をアピールすることが重要です。
また、待遇など実際に働くことになった場合の条件の擦り合わせなども行います。面接が複数回あり、上へ進むにつれて幹部やマネージャークラスと面接する場合もあります。無事面接を通過すれば、めでたく採用となります。
実際アメリカで働くことになると、日本で働く場合と様々なことが異なり、戸惑うこともあるかもしれません。ここでは、アメリカの就労実態を様々な観点から解説したいと思います。
アメリカでは、正規職員or契約職員、フルタイムorパートタイムといった日本でも聞き馴染みのある従業員(Employment)の雇用形態が存在します。
これに加え、コントラクター(Independent Contractor)という働き方が存在します。従業員とコントラクターの大きな違いは、前者は雇用主に雇用され、社会保障税は源泉徴収されます。雇用主は、従業員に労災や福利厚生(年金や医療保険)を与える義務があります。
後者は、契約企業との間に雇用関係はなく、不定期に生じる業務を請負い、報酬を得ます。社会保障税は個人で申告・納税し、福利厚生はありません。
現在、実に35-40%のアメリカ人がこのコントラクターという形態で就労しているようです。コントラクターは、企業が期間限定的に増大する業務などに対処するために、活用されています。
アメリカでは、日本と異なり、税の申告と納税は個人の責任です。毎年1-4月の確定申告(Tax Return)の時期には、税理士やオンラインソフトのサポートを活用し、自力で書類を作成し、申告しなければなりません。
税法は州により大きく異なりますが、一般的に日本より税率が高いと言われています。確定申告することにより、不要に支払いをしている税額を取り戻すことが可能となる場合もあります。
アメリカでは給与や賃金が交渉ベースで決まることも多いです。お金が欲しいなんて声を大にして言えないと思われるかもしれませんが、交渉文化が強いアメリカ。そこは、強気で交渉に挑むことが大切です。
営業や事務のような仕事の場合、時給換算で大体15-20ドルくらいが平均的な給与レンジになってくると思われます。日本より給与が良いと思われるかもしれませんが、ここはアメリカ、その分物価も高いです。
業界やポジションにもよりますが、長時間労働で有名な日本と比較すると大抵のアメリカの組織のほうが、労働時間は短いと言って良いでしょう。毎日17-18時頃になるとオフィスは空っぽという組織も少なくありません。
もちろん、必要に応じて残業しますが、残業したぶんはどこかで調整することが推奨されています。また、特に知的生産労働の業界で、勤務時間がフレックス(コアタイムが定められており、始業・終業時間は問わない。)で、在宅ワークを推奨している組織も多いです。
アメリカの祝日は日本よりも少ないことご存知でしたか?
日本では、クリスマスから正月三ヶ日にかけて、年末年始休暇という考え方がありますが、アメリカでは、感謝祭(11月の第4木曜)からクリスマスがホリディシーズンになります。
毎年ホリディシーズンになると、仕事が一気に進まなくなりますが、年が明けると一変1月2日から通常運転になり、この切り替えぶりが面白いです。もちろん、有給休暇は日本の一般的な企業と同等に付与されますし、傷病休暇や産休・育休・介護休暇といった制度もあります。
アメリカ人は他人にあまり干渉しないので、休暇の取得や時短勤務などを周囲からとやかく言われることも少ないでしょう。
就職活動を始めて最初にぶち当りがちな壁は「求人が見つからない」と「選考が通らない」です。
選考を晴れて通過しても「待遇面が悪い」「車がなく(勤務地に)通勤できない」「滞在ステータスの要求を満たせない」など、アメリカ特有の条件面での交渉がうまくいかず、断念せざるを得ないこともあります。
就職後も言葉や文化の壁は常につきまといます。「リスニング力が低く、上司の指示が正確に理解できない」「スピーキング力が乏しく、質問しても意図した回答が得られない」「仕事はできても、同僚の世間話についていけない」など。
長年アメリカで働く日本人でも、言葉や文化の壁には苦労しています。ここは日本ではないということを受入れ、焦らず地道に乗り越えていくことが大切です。
アメリカで働くことの特徴を一言で表すとすれば、「個人主義で成果(実力)主義」でしょうか。これには、楽しさと厳しさの両面があります。
もし、「協調性」や「空気を読む」といったことを重視したスタンスでアメリカの組織で働いても、決して良い評価が得られるわけではありません。おそらく、周囲からのあなたへの評価は、何を考えているかわからない、面白みが無い、存在感が無いといったものになるでしょう。アメリカでは、例え相手が上司であろうが部下であろうが、一個人間の関係性は対等であると考えます。
あなたが、上司の顔色を伺い、お手伝いできることはありませんかと下手に出ても、彼らはいつまでたっても仕事を任せてくれないでしょう。それでは、どうするのが適切でしょうか。しっかり、あなたの出来ることや興味、あなたとこのような仕事がしたいとアピールしてください。自分で仕事を創るくらいの心意気が必要です。そうすれば、相手もあなたと協働できる可能性を模索してくれます。
また、アメリカではどの仕事だってプロフェッショナルと捉えられます。例えば、レストランのサーバーを想像してみると分かりやすいでしょう。日本では、サービス業は人材の代替が効き、低賃金といったイメージは無いでしょうか。
アメリカでは、彼らのサービスに対して、顧客が「チップ」として飲食代とは別途対価を支払います。上質なサービスを受けたければ、それ相応の対価を支払えという考え方です。当然、サーバー達はより高額なチップを手にするために、上質なサービスを提供しようと努力するでしょう。
このように、専門性を追求していけることは、アメリカで働く楽しさの一つと言えます。一方で、実力(成果)が全ての世界では、過程はあまり重視されません。長時間労働をしても1しかアウトプットを出せない人より、ほとんど会社に来なくても3アウトプットする人の方が評価されます。
このように成果を創出できる人が生き残っていくので、人材の流動が激しくなります。それは、つまり日本ほどガチガチな年功序列も存在しないということです。のほほんと言われたことだけやって昇進していきたいというタイプの方には、アメリカ社会は向いていないかもしれません。
一方で、自分で仕事のペースをコントロールしたい、結果重視で、人とフラットな関係で仕事をしたいという方には、アメリカはとても働きやすい環境だと思います。
いかがでしたでしょうか。今はまだぼんやりと絵空事の方にも、具体的にアクションしている方にも、アメリカ就職に関心のある全ての方の参考になれば幸いです。
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