海外留学を経て英語力を身につけた大学生や大学院生の中には、日本への帰国後の就職活動が不安だという方々も多いかと思います。もしくは、仕事を辞めて語学留学などに飛び立った社会人の場合は、留学期間が終わった後の転職活動が気になることでしょう。
そもそも留学は就職や転職に有利なのでしょうか?留学経験を企業にアピールするためにはどのような点を意識して留学期間を送ればいいのでしょうか?
今回は海外留学経験があり、日系大手の人材紹介会社の海外拠点で人材コンサルタントとして就職や転職のサポートをしていた私が、海外留学後の仕事探しの方法や選択肢、希望の仕事に就くためのポイントを解説していきます。
留学経験をご自身のキャリアに生かしていけるよう、就職活動や転職活動に向けて一緒に準備をしていきましょう。
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まずは多くの方々が気になっていると思われる、「留学は就職や転職に有利なのか不利なのか」についてです。
結論からお伝えすると、これについては「有利」と言えるかと思います。基本的には不利になるようなことはありません。
しかし、ただぼんやりと留学期間を過ごしただけでは、留学経験が不利にもなり得るため注意が必要です。
帰国後の就職活動や転職活動で海外留学を有利にするための方法や、どうして不利になってしまうことがあるのかをお話しするために、企業が留学経験者の何を見て採用しているのかを確認していきましょう。
この項目では、採用試験のときに企業が留学経験者の何を見ているのか、大事な3つのポイントを把握していきます。
留学経験者の採用を検討する企業が重視している視点を知っておくことは、あなたの海外留学をより充実したものにし、希望のキャリアを歩むための第一歩に繋がるはずです。
私は7カ月間シンガポールに語学留学をし、そのままシンガポールに拠点を持つ日系の人材紹介会社に転職をして人材コンサルタントとして働いていました。
そして、海外留学をしていた方々を中心とした、英語力を身につけたたくさんの学生や社会人の就職や転職などのキャリア形成を、人材コンサルタントの立場からサポートしていました。
その中で私は「語学留学の結果、TOEICで高得点を取得した」と自信満々におっしゃる日本人の方々に多く接してきました。しかし、採用活動を行っている企業が注目しているのはTOEICの点数ばかりではないのです。
もちろん、英語力の有無は就職活動や転職活動において大事なポイントです。しかし、企業はTOEICの点数だけを見て英語力の有無を判断するわけではありません。
例えば、面接では英会話の試験が事前の告知なく行われることが多々あります。
この場合、TOEICの点数が高いにも関わらず英会話力が点数の高さに見合わないレベルだと、企業はTOEICの点数ではなく、あくまでもその英会話力で求職者の英語力を評価することになります。
ですので、TOEICで高得点を取得することを目標に留学生活を送ってしまい英会話力の習得を二の次にしてしまうと、就職や転職を目指す際に海外留学の経験が有利にならない可能性が生じます。
むしろTOEICの点数の割に英会話力が低いと、留学経験が不利に働くことさえあるのです。
そうならないためには、留学中に留学先で現地に暮らすローカルの友人を作るなどし、英会話力を上げることを意識して留学期間を過ごすことが大切になります。
現地の友人ができると留学先の価値観や文化にも自然と触れることができます。そこから得られる経験や価値観、学びや視点は、就職や転職の際の面接において企業に興味を持ってもらえる糸口になることが多いです。
このように、留学期間は英会話力プラスアルファの経験を積むことを意識するとよいでしょう。
続いては、社会人の留学経験者が転職活動をするときに大切なポイントをお話ししていきます。
それは「キャリアに一貫性があるか」です。
多くの企業の採用担当者は、求職者の職務経歴の内容を重視しています。いくら英語力が高くても、社会人になってから経験した職種や業界が一貫していない場合は、転職活動が思うように進まないことも十分あり得るのです。
社会人が海外で留学生活を送る場合、金銭的な都合によりワーキングホリデービザを活用して現地で働きながら語学学校に通うケースもあるでしょう。もしくは、報酬が発生しないインターンの形で働くということも考えられます。
こういったワーキングホリデーやインターンの経歴でも、転職活動の際の履歴書や職務経歴書には記載しなければなりません。報酬の有無に関わらず、また短期間の就労だとしても、その経歴を記載しないことは基本的には経歴詐称と見なされるため注意が必要です。
その際に、日本での職務経歴と海外でのワーキングホリデーやインターンの内容に一貫性がない場合は、海外留学の経験が有利にならないことがあるのです。既卒者の中途採用の場合は、いずれかの分野で継続的に業務経験を積んできた方が評価が高くなるからです。
一方で、留学中にワーキングホリデーやインターンを行わない、純粋な海外留学の場合はどうでしょうか。
その場合でも「キャリアに一貫性があるか」は大事なポイントになります。留学前に就いていた仕事と、留学後に目指したい仕事とに一貫性があるか、キャリアの軸を持っているかが企業の採用担当者からは問われます。
海外留学をした社会人の多くは、留学中に身につけた英語力で自分のやりたい仕事を叶えたい、実現させたいと考えていることと思います。確かに、英語力が上がることによってキャリアアップを図れたり、就ける仕事の選択肢が増えることは事実です。
ただ、ここまでお伝えしてきたように、留学前の職務経歴と留学後に目指す職業に一貫性がない場合は、企業との採用面接などで「なぜキャリアを変えたいのか」が問われるでしょう。
そのときに、「留学期間で英語力以外にどのような経験や価値観、学びや視点を得られたのか」を答えられることが非常に重要になるのです。留学生活の中身が英語の習得だけになっていると、この質問には答えられませんよね。
海外留学での経験をどう新しい仕事に生かしていきたいのか。それを転職活動で説得力を持って回答できると、キャリアに一貫性がない場合でも留学経験が有利に働きます。
反対に、留学期間中に目標や目的を持たずただなんとなく過ごしてしまうと、留学経験が不利にもなり得るのです。一旦キャリアの軸が逸れてしまうと、修正は難しくなります。
留学の経験をキャリアアップに繋げたい場合は、キャリアの一貫性を意識すること。留学前の仕事と帰国後に目指したい仕事とに一貫性がない場合は、留学期間中に日本ではできない経験や視点を得るように心がけるとよいでしょう。
企業が留学経験者の何を見ているのか、大事なポイントの3つ目は「キャリアのブランクがないか」です。これも主に社会人の方々が海外留学する際に関連してくる観点になります。
「キャリアのブランク」というのは仕事に就いていない空白期間のことです。
例えば、ワーキングホリデーやインターンなどは、転職活動の際に企業からキャリアのブランクと捉えられてしまうことが非常に多いです。これらが企業からはアルバイトと同様の職務経歴として扱われることが一般的だからです。
たとえワーキングホリデーやインターンの期間が半年間だったとしても、その間に同年代は正社員として責任を背負いながら半年分の業務経験を積んでいます。そのため、これらによるキャリアのブランクがあると残念ながら企業からは前向きな評価を得られにくいのです。
一方、海外留学に関しては留学していた期間にもよりますが、基本的に3カ月以上の留学であれば勉学期間として捉えてもらいやすくなり、キャリアのブランクとして扱われないことがほとんどですので、その点では安心できるでしょう。
ただし、やはり海外留学の場合でも、留学期間を通してどのようなことを学んだのか、どのような力を身につけたかをしっかり説明できないと、企業には留学経験をキャリアのブランクと捉えられてしまう可能性があります。
留学中に何を学び、海外留学を実現したことで英語力以外の何を身につけたのか。その視点を常に持ちながら留学生活を送ることが、その後の転職活動を左右することを忘れないようにしましょう。
それでは、海外留学後の就職活動や転職活動はどのように行ったらいいのでしょうか。
まずは大学生や大学院生の場合と社会人の場合、それぞれを見ていきましょう。その次に具体的な手段をお伝えしていきます。
大学生や大学院生の方々が海外留学した場合は、留学期間が終了し日本に帰国後に留学をしていない一般の学生と一緒に就職活動することになります。
そのため、留学した時期によっては企業説明会への参加や企業のインターンに参加できず、就職活動に対する情報収集が十分にできないために苦労することも予想されます。
また、帰国の時期によっては希望の企業の採用試験のタイミングに合わず、応募すらできない可能性があります。
この場合に選択肢として挙げられるのは、就職活動を1年遅らせるという方法です。
大学生や大学院生のみなさんにとって、同級生よりも1年多く学生生活を送ることは不安もあるかもしれません。休学して海外留学をした場合は同級生よりも2年就職が遅くなるため、躊躇するお気持ちも理解できます。
しかし、海外留学を経験し英語力を身につけたみなさんは、就職が多少遅くなったとしても不利なことはほぼないと考えられます。
もしくは、約200社もの日系企業を含むさまざまな有名企業が一堂に会する就職・転職イベント「キャリアフォーラム」に参加することもおすすめです。
このキャリアフォーラムは1987年にアメリカのボストンで開催されたことをきっかけに、今ではアメリカのロサンゼルスやイギリスのロンドン、そして日本国内でも東京や大阪で行われています。
バイリンガル向けとは掲げられているものの、参加は「英語力が初級レベルから可能」となっています。フォーラムの中で面接や選考が行われる上に、その場で内定が出されることもあるとされているため、こういった留学生向けの就職活動イベントを活用することもよいでしょう。
詳しい開催日時や求人詳細などは、下記サイトよりご確認ください。
バイリンガルのための就職・転職サイト - CareerForum.Net
社会人の場合は、人材紹介会社(転職エージェント)に登録をして企業の求人を紹介してもらうという流れが一般的です。
人材紹介会社を使って求人を紹介してもらったり入社に至っても、一部の例外を除いて求職者のみなさんは無料です。
企業側は採用を検討する場合には人材紹介会社に声をかけることがほとんどですので、インターネットの求人サイトには載っていないような企業の求人情報を多数得ることができます。
社会人の転職活動について、人材紹介会社(転職エージェント)を活用することが一般的だとお話してきました。
この項目では、人材紹介会社を使うことのメリットを解説していきます。
まずは前述した通り、基本的には人材紹介会社を使って転職先を見つけて入社しても、求職者のみなさんには金銭的な負担がない点です。人材を採用した企業が人材紹介会社に紹介手数料を支払うという仕組みだからです。
この手数料は企業側にとって決して安いものではありません。採用した人材の年収の数十パーセントという高額な金額を、企業は人材紹介会社に支払うのです。
ですので、企業は生半可な気持ちで人材紹介会社を通じた採用を行っていません。また、人材紹介会社も不審な点がある求人は扱わないようにしていますので、エージェントにはより多くの良質で信用できる求人が集まります。
最近は人材紹介会社を使わずに、インターネットのアプリなどを通じて採用活動を行う企業もお見かけします。企業側にとっては安い手数料で人材を確保できるというメリットがあるのでしょう。
しかし、求職者のみなさんはどうでしょうか。人材採用のコストをできるだけ削減したい企業が、あなたという存在を果たして大切に扱ってくれるでしょうか。
また、人材紹介会社を通じて入社をすると、企業と万が一トラブルが起きた場合に人材紹介会社が間に入ってくれることが多いです。例えば、採用試験の過程で聞いていた労働条件と実際が異なる、などの場合です。
さらに、人材紹介会社では求人の紹介前に人材コンサルタントとの面談が行われます。たくさんの求職者と接してきた人材コンサルタントは、その面談を通してあなたの良い面を引き出し、企業にアピールしてくれます。
自己PRや職務経歴書の書き方、面接の練習なども行ってくれるエージェントが多いですので、より客観的にご自身を見つめることができ、効率的に転職活動ができる点もメリットと言えるでしょう。
それでは、一体どのような人材紹介会社(転職エージェント)を利用すればいいのでしょうか。
人材紹介会社によって扱っている企業や求人が異なりますので、1つのエージェントに絞るのではなく、最低でも3社程度の人材紹介会社をお使いになる方がよいでしょう。
ここでは海外にも複数の拠点を置いている代表的な4つの日系の大手人材紹介会社をご紹介します。それぞれの特徴を記載しますので、参考になさってくださいね。
※各人材紹介会社(転職エージェント)の詳細は2024年3月時点の内容です。情報が更新されている可能性がありますので、詳しくは各企業へお問い合わせください。
人材紹介会社(転職エージェント) | 特徴 |
---|---|
株式会社ジェイエイシーリクルートメント | ・ハイクラスやミドルクラスなどの管理職の転職に強い ・人材派遣業は行っておらず、正社員求人のみを扱う ・人材コンサルタントは企業担当制のため、各企業がどのような人材を採用したいのかをより詳しく把握している ・企業担当制のため、面談を行った人材コンサルタント以外の複数のコンサルタントからも求人の紹介がある |
株式会社リクルート(リクルートエージェント) | ・人材紹介のほか、人材派遣や求人広告なども手掛けるリクルートグループの転職エージェント ・人材コンサルタントは求職者担当制のため、面談を行った人材コンサルタント1人から求人の紹介が行われる |
パーソルキャリア株式会社 | ・インテリジェンスおよびテンプスタッフの流れを受け継ぐエージェント ・求人掲載サイト「doda(デューダ)」を運営している ・人材紹介のほか、人材派遣も手掛けている |
株式会社パソナ | ・パソナグループは人材派遣業に強みを持つ ・正社員などの人材紹介サービスを行う「パソナキャリア」は、ハイクラスといった管理職人材の転職サービスを掲げている |
今回は、海外留学が就職や転職に有利なのかや、留学経験を企業にアピールするためのアドバイス、そして海外留学後の仕事探しの方法などをご紹介しました。
ただ英語力を向上させることだけを目標とした留学期間を送ってしまうと、帰国後の就職活動や転職活動の際に企業から良い評価を得られなかったり、最悪の場合は留学経験が不利になってしまう可能性もあります。
留学は挑戦したくても誰もが実現できるものではありませんし、留学生活はみなさんの人生にとって一生忘れることのできない素晴らしい経験をもたらしてくれることは間違いありません。
この貴重な留学の日々を楽しむと同時に、「留学先でどのような経験や価値観、学びや視点を得られたのか」を意識して過ごすことで、海外留学の経験をご自身のキャリアにしっかりと生かしてくださいね。
語学留学を具体的に検討するなら、まずは留学を実現するまでの流れを確認しましょう!留学準備では大まかに5つのステップがあります。
留学を思い立ったら、まずは渡航時期、期間、渡航先の目星をつけてみてください。
いつ、どれほどの期間、どんな国で留学するかイメージが持てると具体的な計画を立てやすくなります。
留学へ行くとなると考えることはたくさんあります。
自分で調べてみたものの、ネット上ではさまざまな意見が発信されていて、何を信じていいかわからないまま、検討途中で止まってしまう留学生は多くいます。その疑問、無理に一人で解決せずに留学カウンセラーに相談してみませんか?
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