日本の約20倍の国土を持ち、豊かな自然に囲まれるオーストラリア。親日国のひとつとして知られ、旅行先や留学先としても高い人気を誇ります。
また教育水準が高いうえ、時差が少なく、日本から飛行機で約9時間と比較的近いオーストラリアは、高校生の留学先にもよく選ばれています。
読者のみなさんの中にも、高校留学を考えている方や保護者もいるでしょう。そこで今回は、オーストラリアでの高校留学について解説していきます。オーストラリアでの高校留学の魅力やかかる費用なども詳しく説明していくので、留学を検討している人はぜひ参考にしてみてください。
[目次]
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まずはオーストラリア留学で高校生が得られる3つのスキルや経験について確認していきましょう。
小学校、中学校、と学校や塾で英語をいろいろと学んでいても、日本にいるとなかなか実践の機会がありませんよね。せっかく覚えた文法やボキャブラリーも、それを実際にアウトプットする機会がないと「使える英語」の習得には繋がりません。
もちろん、リーディングやリスニングといった受け身的な英語の能力であれば、アウトプットがなくてもスキルを高められます。しかし、英語話者と対面でコミュニケーションが取れる、といった能動的なスキルを得たいなら、アウトプットは必須です。
つまり留学は、アウトプットの機会を得る最も手早い方法。オーストラリアは英語圏の国なので、日常生活のあらゆる場面で英語が求められます。買い物をしたり、電車やバスに乗ったりといった何気ない日常のひとコマが英語の練習になるのです。
それまで学んだことを実践に移し、自分ができることとまだできないことのギャップをしっかり自覚し、それを埋める作業を繰り返すことでスキルが伸びていきます。
オーストラリアはよく移民の国といわれます。事実、2022年の調査によれば全人口のうち約30%が国外で生まれており、多文化・多民族社会を形成しています(※1)。
ひとつの国の中にさまざまなバックグランドを持った人が入り混じっているので、オーストラリア国内にいるだけでもさまざまな文化に触れられるのが魅力です。オーストラリアでなら、きっと自分の視野を広げてくれるようなさまざまな経験ができるでしょう。
もちろん、ポジティブな経験ばかりではないかもしれません。日本との違いにショックを受けることもあるでしょうが、そういった経験を乗り越えていく中で環境への適応力も磨かれていきます。
このように、10代のうちにオーストラリアで海外留学を経験すると日本で過ごすだけでは得られない国際感覚やスキルが養えます。
留学を通してさまざまな経験をすることで、将来の選択肢が増えることもあります。いろいろな景色を見ることで、新たにやりたいことが見つかることもあるでしょう。
直接仕事に繋がることではなくても、「〇〇の分野でもっと学びを深めたい」など、次の進路を考えるヒントが得られることも。もちろん、日本にいてもできる経験はたくさんありますが、日本を飛び出してこそ得られるものもあります。
また、英語力が向上すればそれだけで将来の選択肢が増えます。英語力が問われる職種や外資系の会社など、挑戦したい仕事が増えるのではないでしょうか。海外の学生生活に慣れておけば、海外大学への進学も視野に入ってくるでしょう。
では、オーストラリアがなぜ高校生の留学先として向いているのでしょうか。次のような理由が挙げられます。
オーストラリアの教育水準は世界の中でも非常に高いことで知られています。例えば2023年の世界の大学ランキング「QS Top University Ranking」では、100位以内にオーストラリアの大学が7つもランクインしました(※2)。
ちなみに、オーストラリアでは大学進学の際に「ATAR」というものが見られます。これは自分の成績が同じ州内の高校生の中でどれくらいに位置するのかを示すランキングで、ランキングが高ければ高いほど選べるコースや大学が増える仕組みになっています(※3)。
さまざまな学習成果を複合的に判断して出されるランキングなので、日本のように入試で一発逆転ということができません。大学進学を目指すなら、高校の早い段階からしっかり勉強をすべきという雰囲気に飛び込めば、自然と勉強への意欲が刺激されるのではないでしょうか。
先述の通り、オーストラリアには移民が多く、中には英語が第一言語ではない人も多くいます。いわゆる「ネイティブ」の英語ではなく、独自のアクセントや訛りのある英語を話す人が少なくありません。
オーストラリアで暮らす人たちはさまざまな「英語」に慣れています。カタコトの英語でも忍耐強く耳を傾けてくれる人が多いのため、英語力に不安がある人でも積極的にコミュニケーションが取れるのです。
また、多文化社会を象徴するように街中にはさまざまな飲食店やお店があります。例えばアジア系のスーパーマーケットがあったり、各国料理のお店があったりとバラエティに富んでいます。普通のスーパーにも醤油やみそが売られているので、日本食が恋しくなったときも安心です。
日本との時差が非常に少ないのもオーストラリアの魅力。世界地図を見てみると、オーストラリアは日本のほぼ真下に位置していることがわかります。
広大なオーストラリアには複数のタイムゾーンがありますが、いずれも日本との時差は1~2時間ほど。日本人学生にとっては家族や友人との連絡が取りやすく、その点は大きなメリットといえるでしょう。
ここでは高校生が実際に体験できる留学の種類について解説していきます。
長期留学とは3カ月を超える留学のことを指します。主に、学校が提供する交換留学プログラムを利用して留学する方法と、学校を休学して私費で留学する方法の2通りがあります。
交換留学は1年間の留学であることが多く、オーストラリアの新学年の始まりに合わせ1月末ごろに渡豪するのが一般的です。滞在先は学校が指定する場合が多く、ホームステイが大半を占めます。
一方、私費留学の場合はもう少し自由度が高く、滞在期間や滞在方法は自分で選べます。1学期間のみ、1年間、高校3年間、と自由に滞在期間を設定可能なうえ、留学先も自分で選べるので、より自分に合った留学をすることができるでしょう。
交換留学の場合は留学先で履修した単位がそのまま1学年の単位として認定されるため、留年の心配がないのが特徴。対して、私費留学の場合は休んでいる期間を「休学扱い」か「留学扱い」に決める必要があり、休学扱いの場合は単位が認められません。
そのため私費留学は、期間によっては留年することがあります。また、「留学扱い」になるかどうかは学校や留学の内容によって変わるため、事前によく確認する必要があります。
春休みや夏休みを利用した短期留学プログラムもあります。「ジュニアプログラム」と呼ばれ、中学生と高校生を対象に、異文化交流や英語学習を目的としたプログラムが組まれています。
勉強だけでなく観光やアクティビティも盛り込んだ内容になっていることが多く、楽しみながら海外生活を体験できるのが魅力です。滞在方法はホームステイが多く、ホストファミリーと過ごす中で英語力を磨いたり、異なる文化や慣習に触れたりといった経験ができます。滞在期間は1週間から3週間程度が一般的です。
ジュニアプログラムは語学学校が独自に実施していることが多く、プログラムの内容や期間、開講時期は語学学校によって異なるので、自分に合ったものを見つけるには事前のリサーチが大切です。留学を通してどんな経験を積みたいのかをよく考えましょう。
続いて、高校生のオーストラリア留学にかかる費用をみていきましょう。仮に、1年間留学するとしたら、下記の費用がかかります。
滞在先や滞在方法、学校によって費用は大きく変わります。そのため正確な費用を知るには留学プランをしっかり決める必要がありますが、総額は400万円前後が目安です。内訳を見ていきましょう。
学費は語学学校に行く場合と公立の高校に通う場合とで大きく変わります。もし、1年間語学学校に通うとなると学費だけで175.4万円です(※4)。他にも施設利用料やテキスト代などがかかる場合もあるので、これ以上になることもあります。
もちろん平均値ですので、選ぶ学校によってはもっと安く済ませられることも。予算に応じて、柔軟に学校を探してみましょう。
一方、現地の高校へ留学した場合は約159~177万円。そこにプラスして入学金や事務費用、制服代などが発生することがあります。価格に幅があるのは、郊外の学校の場合には割引が適用されることがあるから。また、すでに兄妹が入学している場合、2人目以降には割引価格が適用されます(※5)。
高校生の留学の場合、滞在方法はホームステイもしくは学生寮が一般的です。州によってホームステイ費用は違いますが、週に約28,000~42,000円程度は見積もっておきましょう(※6)。
もし、現地に親族がいる場合にはそのお宅にお世話になることで滞在費を浮かせることもできます。
渡航費はチケットを予約するタイミング、渡航予定の時期によって大きく異なります。例えば11月末から1月頃のクリスマスシーズンの航空券は、観光客が増えるため非常に高くなります。
一方、6月や9月といった閑散期であればリーズナブルな価格で航空券の手配が可能です。高い時期には25~30万円、安い時期であれば15~20万円程度が相場です。
ホームステイであれば朝夕の食事はついているのが一般的なので、食費はそれほどかかりません。仮にファストフードのセットメニュー程度の価格帯(1,200円ほど)のランチを毎日食べる場合、1年間でかかる費用は約44万円です。
オーストラリアの場合、留学生はOverseas Student Health Cover(OSHC)に加入する必要があります。保険会社によって保険料は変わりますが、年間66,000円ほどが目安です(※7)。
では、実際にオーストラリア留学を決めたあとには何をすべきなのでしょうか。ここでは、準備期間のステップを順を追って説明していきます。
まずは目標設定をします。オーストラリア留学へ行くなら、英語力アップを目指している人がほとんどでしょう。
最初に自分の現在の英語力を分析し、留学を通してそれをどうやって伸ばしていきたいかを考えます。より具体的な目標設定のためには、TOEICやTOEFLといったテストを受けておくのもおすすめです。
留学の前後でスコアがどれだけ伸びたかを比較すれば、留学の効果が一目瞭然になります。目標次第で選ぶコースが変わってくることもあるので、目標設定はできるだけ細かく行いましょう。
続いて、学校及びコースを選びます。選ぶ際には、下記のポイントを参考にしてみてください。
・費用
・コースの種類
・日本人の多さ
・ロケーション
費用については保護者とよく相談して決める必要があります。コースの種類については自分の希望するものがあるかどうかをよく調べてみましょう。
学校によっては日本人の割合も変わるのでそれもひとつのポイントになります。もし、「日本語を全く話したくない!」ということであれば日本人のいない学校を選ぶのがおすすめです。
また、ロケーションも重要です。郊外の学校だと、「学校帰りに友人とどこかに寄って遊ぶ」ということができないこともあります。自分がどんなスクールライフを送りたいのか、ロケーションも踏まえてよく考えてみましょう。
留学を決めたら、出発のその日までなるべく英語力に磨きをかけるようにしましょう。もちろん、留学後も英語力アップの機会はたくさんありますが、事前になるべく英語力を上げておけば、初めから周囲と積極的にコミュニケーションがとれます。
コミュニケーションの機会が増えれば増えるほど英語力アップのチャンスは広がります。留学をより実りのあるものにするためにも、英語力アップは欠かせません。
学校の授業などではなかなか英語を「使う」機会はないかもしれません。そういった人は、オンライン英会話などを活用してアウトプットの機会を作りましょう。
留学期間が決まったら、航空券の手配をします。もちろん出発の直前でも航空券を買うことはできますが、取りたい便に空きがない、チケットの価格が高騰している……などの事態が起こる可能性もあるので、早めの購入がおすすめです。
また、OSHCにプラスして海外旅行保険に加入するなら、早めに各保険会社の保険を比較して必要な保険を準備しておきましょう。ちなみに、親のクレジットカードに「家族特約」が含まれている場合には、3カ月程度であれば海外旅行保険が適用になることもあります。
出発が迫ってきたら、荷物の用意も始めます。直前になって「アレがない!」と困ることがないように、遅くとも出発の2週間前に準備し始めることをおすすめします。
準備の際に気を付けなければならないのは、オーストラリアは南半球だということ。日本とは季節が逆なので、それを踏まえて準備する必要があります。例えば10~11月に渡航する場合、日本では秋ですがオーストラリアでは春にあたります。
そのため花粉症の人は着いた途端に症状が出る……なんてことも。季節の違いを踏まえて、常備薬や洋服などを用意するようにしましょう。
何から準備すればいいかわからない人は、ぜひ下記サイトを参考にしてみてください。
留学に必要な持ち物チェックリスト!日用品から食品まで海外に持参すべきおすすめアイテムをご紹介
最後に、オーストラリアでの高校生留学に関してよくある質問とその回答をご紹介します。
高校生向けの奨学金は多数あります。例えば文部科学省の「トビタテ!留学JAPAN」では中高生を対象に、留学費用の全額もしくは一部負担を支給しています。募集人数に限りがあるので狭き門ですが、留学先や勉強内容に縛りがあまりないので、誰でも応募しやすい奨学金です。
他にも各自治体が実施している奨学金など、高校生でも申し込める奨学金をぜひ調べてみてください。詳しくは下記ページで解説しています。
高校生の留学を支援する制度や奨学金9つ!選び方とあわせて解説します
現地の高校へ留学する場合、入学基準として一定の英語力があることが定められています。例えば、ニューサウスウェールズ州の場合はIELTSのオーバーオールスコア5.5が求められます(※8)。
IELTSに限らず英検など他のテストのスコアを提出することもできますが、いずれにせよ一定以上の英語力が必要です。規定の英語力を満たせない場合、留学先で語学学校に通うことが求められます。
また、18歳未満の人が学生ビザに申し込む場合、ガーディアン(保護者、後見人)を選出しなければなりません(※9)。その他にもOSHCの加入義務など、留学するうえで求められる手続きがいくつかあります。
先述の通り、オーストラリアの高校は1月始まりです。そのため、高校1年生のうちに留学したいなら高校1年生の1月入学を目指す必要があります。準備期間や出願の時期などを考えると、日本の入学と同時に準備を始めるべきといえます。
夏休みや春休みを利用した語学留学であれば、直前でも申し込めることはあるでしょう。しかし、滞在先や航空券の手配などを考えると、早めの動き出しがベターです。
実際に高校留学を経験したあずささんの体験談をご紹介します。
あずささんは高校2年生からオーストラリアに留学。もともとは帰国して日本の高校を卒業する予定だったものの、現地での進学を選びました。高校と大学、合わせて7年間をアデレードで過ごしています。
留学中は部活動への参加したり、ホストファミリーとの交流したりと、英語力アップだけでなく異文化交流も重ねていったそうです。なぜアデレードだったのか、なぜ留学期間を延長したのかなど、詳しく知りたい方はぜひあずささんの体験談を読んでみてください。
【高校・大学留学体験記】16歳で私がオーストラリアのアデレードへ渡った理由と実現までの道のり
オーストラリアは治安の良い国として知られていますが、危険がないわけではありません。学校のルールをきちんと守る、危ない場所に近づかない、夜遅くに出かけないなど、「自分の身を守る」ことを常に心掛ける必要はあるといえます。
先生やホストファミリーの言うことをよく聞き、危ない橋を渡るようなことはしないようにしましょう。なお、下記記事では留学先で安全に過ごすポイントをご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
【留学前に知っておきたい注意点まとめ】安全に楽しく留学生活を送るポイントを解説
オーストラリアは日本人にとって留学先として魅力的な国であり、日本人留学生が非常に多い環境です。そのため、「語学学校やカレッジに入学したら、クラスの半分が日本人だった」などということも。
もちろん学校によって状況が異なるので一概にはいえませんが、その点はデメリットになりえます。もしそういった状況を避けたいなら、学校を選ぶときに日本人の少ない学校を選ぶようにしましょう。
また、物価が高いというのもオーストラリア留学のデメリットのひとつです。例えばスーパーで500ml程度のソフトドリンクを買うなら、300円くらいはかかります。日本なら100円程度で買えるものも、その3倍はかかると思っておいた方がいいです。なるべく外食はしないようにするなど、節約生活が求められるかもしれません。
今回の記事では、オーストラリアでの高校留学について詳しく見てきました。留学を検討している人はぜひ参考にしてみてくださいね。また、中にはまだ迷っている人もいるかもしれません。まだ若いとはいえ、英語を習得するには遅すぎるのではないかと不安な人もいるでしょう。
しかし、言語習得に遅すぎるということはありません。もちろん、始める年齢によって適切な勉強方法が違ったり、得意な分野が変わってきたりすることはあります。しかし、一定の年齢を過ぎたからといって言語習得ができなくなるわけではありません。事実、大人になってから第二言語習得をしている人は数多くいます。
反対に、「まだ早すぎるかも」と悩んでいる人もいるでしょう。大学生の留学と比べ高校留学はその先の仕事やキャリアなどを具体的にイメージする機会が少なく、留学がどうやって自分の将来に繋がっていくのかわからない人もいるでしょう。
しかし、だからこそいろいろなことにチャレンジしやすい時期といえます。失敗を恐れず、何事にもポジティブに取り組んでいく姿勢があれば、きっと留学を通して得られるものはたくさんあります。いろいろな経験を積む中で、自分の夢や目標がはっきり見えてくることもありますよ。ぜひ本記事を参考に、留学プランを練ってみてください。
語学留学を具体的に検討するなら、まずは留学を実現するまでの流れを確認しましょう!留学準備では大まかに5つのステップがあります。
留学を思い立ったら、まずは渡航時期、期間、渡航先の目星をつけてみてください。
いつ、どれほどの期間、どんな国で留学するかイメージが持てると具体的な計画を立てやすくなります。
留学へ行くとなると考えることはたくさんあります。
自分で調べてみたものの、ネット上ではさまざまな意見が発信されていて、何を信じていいかわからないまま、検討途中で止まってしまう留学生は多くいます。その疑問、無理に一人で解決せずに留学カウンセラーに相談してみませんか?
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※1...Australian Bureau of Statistics「Australia's Population by Country of Birth」(参照日:2023-12-7)
※2...QS Top Universities「QS World University Rankings 2023: Top global universities」(参照日:2023-12-7)
※3...Australian Government「How to get into higher education」(参照日:2023-12-7)
※4...スクールウィズ「【2022年版】期間別オーストラリア語学留学費用のまとめ」(参照日:2023-12-7)
※5、7...NSW government「International student program fees」(参照日:2023-12-7)
※6...Victrian Government School「2024 Standard International Student Tuition and Non-Tuition Fees」(参照日:2023-12-7)
※8...NSW government「International Student Program」(参照日:2023-12-7)
※9...Australian Government「Welfare arrangements for students under 18」(参照日:2023-12-7)
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