ロンドン大学バークベック・カレッジは、ロンドン唯一の夜間大学です。200以上の学部・大学院の授業が夜間に行われています。「キャリアにブランクを作らずに学びの機会を得られる学校」として、多くの社会人学生が通っています。
私は駐在員としてフルタイムで働きながら、週に2回バークベック・カレッジで、International Marketingの修士課程で学んでいます。1学期目も半分が終わり、後半の試験に向けて準備を始めたところです。
連載3回目の今回は学期前半を振り返り、履修している科目の授業内容やグループワークで取り組んでいることなど、大学院での授業の様子をまとめてお話したいと思います。
地下鉄で見かけた大学の広告。9〜5は業務時間のこと、6〜9は夜間大学の授業の時間。意訳すると「キャリアチェンジのために夜の時間を使おう」という感じです。
私の専攻は「International Marketing」といって、マーケティングの中でも国際戦略に焦点を置いています(マーケティング学科の中にも、Marketing, Digital Marketing, Marketing Managementなど、様々な専攻に別れています)。
授業は週に2回、月曜と木曜の午後6〜9時までで1科目ずつ、仕事終わりに通っています。学科は大体60〜70人くらいで、2割がイギリス人、5割がヨーロッパからの留学生、残りはアジア・アメリカ・中東が1割ずつくらいです。
10月は最初の学期なので、全マーケティング学科の学生とコア科目を履修しています。現在受講している授業は下記の通りです。
Marketing Strategyは、外部環境の変化や競合他社の中での立ち位置、自社の強み・弱みを分析し、企業にとって効果的な戦略を作ることを目的とした授業です。
この授業で習う理論やフレームワークは、外部環境(PESTLE、SWOT/TOWS、STP Model)、競合他社の中での立ち位置(Porter 5Forces、Perceptual Map)、自社の強み・弱み(SWOT/TOWS)などです。
授業は前半がスライドを使った講義、後半はSeminar Readingという20〜30ページくらいの課題を事前に読んできて、それに基づいてディスカッションを行います。授業で取り扱う事例は、基本的にヨーロッパかアメリカベースの企業が多いです。
Marketing Managementでは、マーケティングに使われる理論やフレームワークを学び、戦略をプロジェクトに落とし込み、その実施プランを作るための授業です。
基礎科目ということで、分析に使う理論やフレームワークはMarketing Strategyと被る内容も多いです。ですがこちらはどちらかと言うと戦略を実行するための具体的な手法にフォーカスしていて、Marketing Mix(7Ps)、Consumer Behaviour、Brandingなどの概論を勉強しました。
授業の前半は講義で、後半はイギリス本社の著名な会社を教授からグループごとに割り当てられ、その会社について前半の内容をベースにグループディスカッションをします。
授業で使う教科書はどちらも電話帳並の分厚さ+課題のリーディング資料(大体20〜30ページくらいのアカデミックな記事)も別途あるので予習や復習は大変です。ですが社会人が多く通う夜間大学のため、ほかの大学に比べると課題の量は少ないほうだそうです(たしかにフルタイムの仕事をしていなければ、だいぶ余裕があるなぁという感じです)。
どちらの授業も出席点はなく、途中課題のレポート40%、期末試験が60%の採点です。
この大学に入って驚いたのは、学生生活に関するほとんどのことがIT化されていることです。出欠は教室の入り口にあるICカードリーダーに学生証をタッチします。
また授業中の音声は録音されており、スライドの映像とともに授業後にアップされるので、万が一欠席しても授業内容がわかるようになっています。
レポートはポータルサイトを通して提出します。私が7年前に日本の大学に通っていたときは、教授の部屋のポストに提出しにいっていたのですが。これは時代なのか、日本だからなのか……。
また日本の大学を卒業した私にとって他にも新鮮だったのは、グループ課題があること。受講しているどちらの科目も、中間課題はグループワークのレポート提出でした。
グループで1つの企業を選んで、その会社のマーケティング戦略やプロジェクトの計画について2500〜3000ワードのレポートにまとめて提出するというものです。イギリス人と留学生という語学面での実力差をフェアに採点するためにも、グループを組むことが必要なのかなと思います。
Marketing Strategyのレポートでは、玩具のLEGOを例にレポートを作成しました。大学院の課題では調査に必要な下調べだけでなく、今後の戦略について細かく論じる必要があるため、「各章の作業を分担する」というより「それぞれが必要な情報を調べた上で個人の意見を出し、話し合いながら完成させていく」というプロセスを踏む必要があります。
授業後や休日に学校の図書館に集まり、意見をメモに書いて張り出しながらみんなで話し合ったのは、学生に戻った実感が湧いてとても楽しかったです。
大学の図書館にはグループワーク専用のスペースがあり、ここではスクリーンを使ったり話したりすることが可能です。
この授業のグループワークはイギリス人1名、その他5名は留学生というチームでしたが、イギリスの学部を卒業しているアカデミックなレポートに慣れている子がリーダーシップを発揮してくれたので、とてもやりやすかったです。
グループワークだと、チームのやる気や雰囲気で成果物の出来が左右されてしまうのが楽しくもあり、また難しいところです。Marketing Managementの授業では、クラスのみんなの前で行うグループ発表の1週間後に2500ワードの個人レポート提出(中間評価の採点は個人レポートで判断)がありました。
ここで「グループ発表でちゃんと頑張ったらあとは楽だな」と思うか、「どうせ個人レポートでしか点はつかないんだから、グループ発表は適当でいいか」と思うかは人それぞれなのですが、私のチームは後者に流れてしまいました。
決してみんなに全くやる気がない、というわけではなかったのですが、1人1人がどちらかというと後者よりの心構えでいたために、個人で各章を分担して発表当日を迎えたわけです。
グループ発表の様子。最初に名乗り出たチームの発表は素晴らしく、自分たちの未完成度にあせりはじめた頃は時すでに遅し……。
そして案の定、グループ発表はボロボロの出来でした。各章を1人ずつ役割分担しているので、調査背景が今後の戦略にまったくつながっていない支離滅裂なプレゼンでした。
この結果に猛省し、有給2日と週末を全て使い切って個人レポートに取り組み、会社の英語ネイティブの同僚に文法などのチェックもしてもらい、丸4日かけて完成までこぎつけました。
欧米の大学や大学院に留学経験のある友達と話すと、「まじめにやらない子の代わりに2人でレポートを書いた」「自分の意見を譲らないメンバーがいて大ゲンカになった」など、グループワークの数だけ苦労があるんだなぁ…と感じています。
ロンドンでの大学院生活、学期前半を終えて感じたことは、インプットよりアウトプット(授業中の発言やグループワークでの議論、レポートの作成)に課題があること。まずは勉強している内容への理解を深めて気長に改善していきたいと思っています。大学の留学生用の語学サポートサービスを利用しているので、また機会があったらそのお話もできればと思います。
今回は初めての学期だったので、どこまでの危機感をもってみんなをプッシュすればいいのかお互い戸惑いがあったり、積極的になりきれなかった自分にも失敗の原因があったと思います。
今回の反省を生かし、これからの課題はメンバーと対面で話し合う時間を作ったり、自分からミーティングの進め方に意見してみるなど、一歩ずつ成長していきたいなと思いました!
次回は「仕事と学業の両立について」についてお話したいと思います。
過去の連載はこちら↓↓
# ロンドンOLの大学院生活
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