こんにちは!Ayakaです。私は現在、キャリアチェンジを目指す1年間のビジネス留学中です。9月末にグリフィス大学のビジネススクールを修了し、現在はオーストラリア・ブリスベンにある自転車普及促進のための非営利組織、バイシクル・クイーンズランドでインターンシップをしています。
今回のテーマは「アカデミックライティングのスキル」です。「#15~長文英語レポートを仕上げるコツ!現役留学生の秘策を紹介」で、大学の成績取得に必要なレポート課題を仕上げるノウハウをお伝えしましたが、今回はよりアカデミックライティングの具体的なテクニックを掘り下げていきます。
実際に海外大学に留学される方はもちろん、英語検定、TOEFLなど英語の資格試験にも活用できるのでぜひ参考にしてみてくださいね!
なお、オーストラリアの大学に関する情報は下のページでまとめているので、制度や名門大学などを知りたい方はチェックしてみてください。
オーストラリアの大学へ進学するには?制度の特徴や大学ランキングを一挙解説
【目次】
・アカデミックライティングとは?
・まずはレポートの基本構成を知ろう
- (1) Preliminary parts(前置き)
- (2) Body of the report(本体)
- (3) Supplementary parts(補助)
・アカデミックライティング3つの注意点
- (1) 1パラグラフ1トピックセンテンス
- (2) Conjunctionsを適切に使おう
- (3) Referenceは適切か?
・大学のワークショップやサポートサービスを活用
・まとめ
アカデミックライティングとは、論文などで使われる学術的な文体を指します。英語の「ライティング力」と一言で言っても、日本語と同様、友人とのテキストメッセージのやりとり、職場でのビジネスメール、論文など、書き言葉のスタイルはさまざまです。
実際に海外の大学で授業の評価課題のレポートを執筆する際はもちろん、各種英語試験でも、きちんとアカデミックライティングのルールに則って記述できているかを厳しく見られていることが大半です。
なので、好成績を狙うなら、アカデミックライティングの基本をしっかりと押さえておくことは必須!以下で一緒にポイントを押さえていきましょう。
大学のレポート課題は「3,000語前後まで許容」など、たいてい語数が指定されます。語数を満たすことだけに囚われて、やみくもに書き連ねるのはNGです。
レポートはきちんと構成立てられたものであることが必要で、語数指定をもとにどのパートにどのくらいの語数を割くか考えながら書き進めます。レポートの構成は、学術分野によって異なったり、授業ごとに教授が指定したりすることもありますが、基本的には以下のようになっています。
(1) Preliminary parts(前置き部分)
(2) Body of the report(レポート本体)
(3) Supplementary parts(補助部分)
レポート本体に入る前に付けるべき要素です。書籍にタイトルや著者名、目次があるように、レポートにも本文に入る前にこれらの要素が必要です。
■ Title page and Acknowledgements(タイトルとアクナレッジメント)
レポートには、タイトルページを付けましょう。授業のレポート課題ならタイトルの他にも、大学名、講師名、コース番号、学籍番号、氏名、日付などを含めます。
■ Executive Summary or Abstract(概要)
概要には、レポートの主要点をまとめます。目的、調査方法、結論、今後の課題などを端的にまとめます。レポートの最初に来る部分ですが、通常は最後に執筆します。
■ Table of Contents(目次)
レポートの構成を示す目次です。Microsoft Word で執筆するなら、スタイル機能の「見出し」と、参考資料機能の「目次」を使うと、自動作成できるので便利ですね。
いよいよレポート本体です。読み手に必要な情報が過不足なく伝わるよう、以下の各要素のうち必要なものを順に、適宜盛り込んでいきましょう。
■ Introduction(序論)
読者の注意を引くために重要なパートです。レポートの目的、解明したい問題や状況を明確に書きます。必要に応じて、研究方法や研究背景も含めましょう。最終文には、「このレポートは何を論じるものなのか」を明確にする、
This paper argues that …
This essay contends that …
It will be argued that …
のような“argument”、もしくは“thesis statement”(エッセイ全体の主題文)を記載します。
例)This report discusses how Facebook Inc. has developed strategically and how its internal and external environments have developed, from a marketing view point.
(このレポートでは、Facebook Inc. がいかに戦略的に発展し、その内的・外的環境がどのように発展してきたかをマーケティングの観点から述べる。)
■ Methodology(研究方法)
ここでは、何をどのように行ったのか研究方法を明記します。実験や調査を行った場合は、実験材料、被験者、手順も含めましょう。
■ Results or Findings(結果と発見)
研究結果を明記します。あくまで客観的事実を記載するのであって、主観を混ぜないように注意しましょう!
■ Discussion(考察)
研究結果から導かれた事実と、それをもとにどのようなことが言えるかを書きましょう。
■ Conclusions(結論)
レポートの内容から導き出せる示唆も含めて、レポートの結論をまとめます。
■ Recommendations(レコメンデーション)
自分の研究結果をふまえて、特定の状況においてどのようにするのが望ましいのか、提案できることを執筆します。
例)It might be concluded that the sales promotion presenting in Coles supermarket should be successful via motivating female emotion of decision-making and effectively telling them what to buy.
(Colesスーパーマーケットにおけるセールスプロモーションは、女性の決断意欲を高め、買うべき商品を効果的に宣伝することによって、成功すると結論づけられるだろう。)
レポートの末尾には、参考文献一覧や付録資料などを適宜付けましょう。
■ References(参考文献一覧)
レポート中でふれた参考文献の出典を一覧でまとめます。出典の記載ルールは、レポートのレファレンススタイル(論文での出典の示し方の書式ルール)によって異なるので注意しましょう。
例えば、APAスタイルは、学術論文などのアカデミックな分野の文書に使われる書式で、日本の文系学部でも馴染みがある人が多いかもしれません。アメリカ心理学会(APA)のスタイルガイドである『APA論文作成マニュアル(Publication Manual of the American Psychological Association)』で規定されています。
例)APAスタイルでの参考文献の表記の仕方
Fetherston, T. (2007). Becoming an effective teacher. South Melbourne, Australia: Thomson Learning.
執筆者の数、文献の種類(書籍、ジャーナル、Web上の記事など)によっても記載の仕方が異なるので注意が必要です。またこの他にも、人文・社会科学以外の科学分野で多く用いられるハーバードスタイル、自然科学系の論文で多く用いられているバンクーバースタイルなどの様式があります。
スタイルにより、著者名・発行年・タイトル・出版社・出版都市・国(州)の表記法や順番に微妙な違いがあります。また、レファレンススタイルが異なると、本文中でも出典の記載の仕方が異なるので注意しましょう。レポートを執筆する際は、どのスタイルを指定されているかを授業要綱や教授によく確認し、スタイルのマニュアルなどを見ながら表記すると安心ですね。
なお、私の通っていたグリフィス大学では、レポートを大学のウェブサイト経由で提出していたのですが、最終提出の前にドラフト(下書き版)の提出があり、そこで過去の文献から不適切にそのまま引用している部分がないかを自動でチェックするシステムもありました。
もちろん、出典記載のない転載やplagiarism(剽窃)はご法度です。大学によっては、落第など厳しい厳罰処分があるので参考文献を引用する際は、ルールを守り慎重に扱うようにしましょう!
以下は、実際に私がグリフィス大学ビジネススクールの授業、Strategic Marketing のコースで、Facebook の企業戦略についての分析レポートを執筆した際の見出しです。観察や実験ではなく、企業やビジネス系のウェブサイト、参考文献などの分析をもとに執筆したレポートなので、ビジネスモデルやマーケティング戦略についての見出しが含まれています。
- | Executive Summary(概要) |
1.0 | Introduction(導入) |
2.0 | Opportunities and Justification (機会とその妥当性) |
3.0 | Holistic and snake positioning (全体的ポジショニング・スネークポジショニング図) |
4.0 | Sustainable Competitive Advantage and value proposition (持続可能な優位性とバリュープロポジション) |
5.0 | Marketing Mix of Facebook (Facebook のマーケティングミックス) |
6.0 | Implementation(示唆) |
7.0 | Conclusion(結論) |
- | References(参考文献一覧) |
アカデミックライティングにおいて気を付けたいポイントはたくさんありますが、大きなものを以下で3点ご紹介します。
まず1つ目は、パラグラフの構成について。英文はパラグラフライティングとも言うように、パラグラフ(段落)構成が非常にしっかりとしています。最も基本的なルールは、1パラグラフ1トピックセテンスであることでしょう。
トピックセンテンスとはいわゆる主題文のこと。パラグラフのはじめで、パラグラフの要点をビシッと述べて、その他の部分はトピックセンテンスをサポートするための文章になります。
例えば、以下の例では1文目でオーストラリア市場の全体的な傾向を述べ、2文目以降で、具体的な統計データについてふれる流れを作っています。
例)In the Australian tourism market, domestic tourism has been encouraged more than international tourism. Since 2008, …
(オーストラリアのツーリズム市場においては、海外旅行よりも国内旅行の方が奨励されてきた。2008年から…)
最初は英語で端的にまとめることはなかなか難しいかもしれませんが、このルールを押さえてしまえば、自分が読み手になった際のリーディングも効率的にできるようになります!
英語には however (しかし)や and (または)といった接続詞をはじめ、つなぎ言葉の働きをする単語・フレーズがたくさんあります。文と文、パラグラフとパラグラフの論理関係が適切なものになるように、この conjunctions を適切に使う力が必要です。代表的な conjunctions を以下で見てみましょう。
■ Addition(追加)
additionally(加えて) / moreover(さらに)/ not only A but also B (AだけでなくBも)/ then(それから)
■ Cause(原因)
because ~(なぜなら~)/ with this in mind(この点をふまえて)/ given that(~をふまえて)
■ Condition(条件)
as long as ~(~である限り)/ if(もし~なら)/ in that case(その場合は)/ on (the) condition (that)(~という条件において)/ provided that(~と仮定して)/ under those circumstances(そのような場合において)/ unless(~でない限り)/ when(~である時に)
■ Consequence / Result(結果)
as a result(結果として)/ consequently・accordingly・thus・hence・therefore(したがって)
■ Examples(例)
for example(例えば)/ for instance(例えば)/ in other words (言い換えると)
■ Opposition(反対)
different from ~(~と異なり)/ in contrast(対照的に)/ rather(むしろ)/ unlike ~(~と異なり)/ while(一方)
■ Similarity(類似)
also(~もまた)/ in the same way(同様に)/ including(~を含めて)/ like(~のように)/ similarly(同様に)
ここでの reference は先に取り上げた「参考文献」の意味ではなく、「照応」のこと。文章中で代名詞や指示語を用いて具体的な何かを指すことを言います。reference に使われる主な代名詞と指示語は以下のようになります。
■ Pronouns(代名詞)
I / me / she / you / we / my / mine など
■ Demonstratives(指示詞)
this / these / here / that / those / there など
■ Definite article(定冠詞)
the
■ Comparatives(比較)
another / other / similar / better など
例えば、引用した参考文献や本文中でいきなり he や she が出てきて、それが誰を指すのかが明記されていなければ読み手は混乱してしまいます。本文中で this や that を使う時も、それが何を指すのかが伝わりづらい文構成は避け、必要に応じて再度同じ名詞を繰り返したり、言い換えを用いたりするとよいでしょう。
自分で書いた文章を読み直し、「これはどの名詞(句)を指しているのか?」「これは何と比較して better と言っているのか?」と確かめると安心です。
例)Among the Whitsunday islands resorts, Daydream Island Resort and Spa is a widely known tourist destination; however, it needs to rebrand and reposition because it is planning to reopen after recovering from Cyclone Debbie’s damage.
(ウィットサンデー諸島リゾートの中で、デイドリームアイランドリゾート&スパは、広く知られた観光地である。しかし、サイクロンデビーで受けた被害の修復の後に再オープンを計画しているため、(これに際して)同ホテルは再ブランド化と再ポジショニングが必要である。)
上記の例では、接続詞 however を用いて前後をつないでいます。また、2つの代名詞 it はどちらも Daydream Island Resort and Spa を前方照応しています。
アカデミックライティングをする上では、レファレンススタイルに、パラグラフライティングに、つなぎ言葉に照応に・・と気を付けねばならない点がたくさんありますね!
最初からすべてを完璧にマスターするのは、とてもではないですが大変です。留学前は、アカデミックライティングに特化した参考書などで、文章例に多くふれておくとよいですね。
また実際に留学すると、海外の大学では、大学側がアカデミックライティングのノウハウをまとめたウェブサイトや、英文の書き方ワークショップ、個人単位での英文カウンセリングといった各種サポートを用意しています。なので、ぜひそういった仕組みを積極的に活用してみてくださいね。
ここまで、アカデミックライティング、英文レポート執筆の基本的なルールについてふれてきましたがいかがでしょうか?
今回ここで取り上げた以外にも、細かな決まり事はたくさんあります。「複雑!」「難しそう!」と思うかもしれませんが、実際に書いていくうちに自然と身につく部分も多いですし、書けば書くほど、書くスピードや精度が上がるのはもちろん、参考文献の検索能力、自分のレポートの論拠となる情報を参考文献中から見つけ出す力も上がってくるものです。
「海外留学」=「英語を話せるようになる」というイメージ・目標を持っている方も多いかもしれませんが、実際に学業を修めるにはこのアカデミックライティングの力が大きくモノを言います!これから留学を考える皆さんは、ぜひそんなことも念頭に入れながら、準備に臨んでくださいね。
英語レポートを書くコツについては以下も参考にしてみてくださいね。
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