アメリカではサービスの対価として、チップを払う文化があります。日本ではチップの文化がないため、アメリカでの滞在や旅行の際などに、渡すタイミングや相場で悩むことがあるかもしれません。
今回はアメリカに4年の在住経験がある筆者が、今回はアメリカでのチップ事情について、チップを渡す理由やチップに対する考え方、シーン別チップの相場や少なすぎる場合のトラブルなどを解説します。
なお、アメリカの観光情報については下のページでまとめているので、おすすめの観光スポットや人気の料理などを知りたい方はチェックしてみてください。
アメリカのおすすめ観光スポットやイベント、グルメなどを紹介
※記事内ではアメリカドルをUSDと表記し、為替レートには2023年2月9日時点での情報を参照し、1USD=133円で計算しています。
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国によってはチップが必須とはなっておらず、心付け程度にチップを渡す場合があります。例えば日本や中国、韓国、シンガポール、ヨーロッパ諸国などは、基本的にチップを渡しません。
一方、アメリカではチップの支払いがマナーとして位置付けられています。レストランやホテルなどではチップを渡すことが前提となっているため、アメリカのチップ文化について理解がなければ思わぬトラブルを引き起こす可能性もあります。
アメリカではサービスにも値段が付くという考えに基づき、チップを支払うことが慣習となっています。
チップの金額はサービスへの評価を反映していると捉えられるため、金額があまりに少ない場合では、従業員の働きがいも失われてしまいます。働く側のモチベーションが低いと、結果としてサービスの低下につながるため、顧客にとっても望ましい状況とはいえません。
また、アメリカではチップは給与の一部に含まれるため、お客さんからチップが支払われることを前提に、雇用元からの給与が決められている場合もあります。お客さんからのチップがなければ、従業員が収入面で苦しくなることも考えられるため、基本的にチップは必要となっています。
チップはサービスに対する感謝を前提としているため、支払わなくても罰則が生じるわけではありません。しかし、サービスを受けたにもかかわらずチップを支払わない場合や、極端に金額が少ない場合ではトラブルが生じる可能性もあります。
アメリカのサービス業で働く人々にとっては、チップは支払われて当然だと認識されています。きちんとサービスを提供しているのにチップが少なければ従業員の不満につながり、場合によっては文句を言われることもあります。
また、チップを払わなかったり金額が少なかったりすると、サービスの対価を支払わないお客さんだと見なされるため、受けられるサービスの質が低下したり、ぶっきらぼうな態度を取られたりすることもあります。
では、一体どのくらいの金額をチップとして支払えばよいのでしょうか。チップの金額に対する一般的な考え方を紹介します。
10%:サービスに少し不満がある時
アメリカでのチップの相場は10%から20%程度とされているため、10%のチップでは一般的に少なめだと捉えられます。
15%:普通のサービスを受けた時
特に良いサービスを受けたわけでもないけれど、不満もない場合には15%程度のチップを支払うのが一般的です。
20%:サービスに満足した時
従業員の愛想が良かったり、気が利くサービスが提供されたりと、満足度の高いサービスを受けた場合には、20%程度のチップを支払うのが一般的です。
上記は一般的なチップの金額のイメージ。ただし、チップが多いか少ないかの捉えられ方は、お店のグレードなどでも左右されます。例えば、カジュアルなお店なら15%でも問題ない場合がある一方、高級店では安すぎると捉えられてしまうこともあります。
シーン別のチップ相場と、支払いのタイミングについて具体的に紹介します。
サービスに対する感想 | 目安の支払い金額 |
---|---|
・道を間違えられ、目的地に着くまでに余分に時間がかかった ・ドライバーの話や愚痴などを散々聞かされ、不快な思いをした |
10%程度 |
・移動中の会話や雑談などがなく、淡々と目的地に到着した | 15%程度 |
・移動中の会話が楽しめ、良い気分で目的地に到着した ・ドライバーがおすすめの観光地などを紹介してくれた |
20%程度 |
ドライバーに荷物を運んでもらった場合などでは上記に加え、1つの荷物につき1USD(約133円)を足すことが一般的です。
Uberの場合は、行き先の指定から支払いまでがアプリ上で完結するため、基本的にチップを手渡しする必要はありません。サービスが良かった場合など、チップを渡したいと感じたなら、乗車後にアプリ上で支払うことも可能です。
タクシーを利用した際のチップは、タクシー料金の支払いと同時に渡します。料金の支払いの際にお釣りが生じる場合、運転手によってはお釣りをチップと認識し、そのまま返さず受け取るケースもあります。
Uberでは前述したとおり、乗車後にアプリ上からチップを支払うことができます。Uberのチップはシステム手数料などを徴収されることなく、全額が担当ドライバーに支払われます。
サービスに対する感想 | 目安の支払い金額 |
---|---|
・ドアマンがタクシーを拾うのを手伝ってくれた | 1〜2USD(133〜266円)程度 |
・ベルボーイが荷物を部屋まで運んでくれた | 荷物1つにつき2〜5USD(266〜665円)程度 |
・コンシェルジュに何か相談し、解決してもらった ・レストランやレジャースポットなどの予約をしてもらった |
5USD(655円)〜 |
・ウェイターにルームサービスを運んでもらった | 2USD(266円)程度 |
・ハウスキーパーに部屋を掃除してもらった | 2〜5USD(266〜665円)程度 |
コンシェルジュへの相談については、簡単な質問程度ならチップを渡す必要はありません。何かの予約をとってもらった場合などにはチップを支払い、難しいリクエストに応えてもらった際には20〜50USD(1,330〜6,650円)程度の金額を渡すケースもあります。
ドアマンやベルボーイ、コンシェルジュやウェイターからのサービスを受けた場合には、その場でチップを支払います。
一方、ハウスキーパーは外出中にベッドメイキングや掃除をしてくれるため、直接顔を合わせる機会があまりありません。ハウスキーパーへのチップはベッドサイドや枕の上など、目につきやすい場所に置いておくといいでしょう。
サービスに対する感想 | 目安の支払い金額 |
---|---|
・不満もなく食事を終えた場合 | 20%程度 |
・サービスに対して少し不満がある場合 | 15%程度 |
・満足度の高いサービスを受けられた場合 | 20%以上 |
レストランでは通常20%程度、サービスの満足度が高ければ20%以上のチップを支払うのが一般的です。サービスに不満がある場合でも、チップは最低15%は支払うようにしましょう。
あまりサービスが良くないと感じたとしても、チップは労働の対価として通常通り支払います。
サービスへの不満点はチップを減らすので示すのではなく、お店やマネージャーに苦情として伝えましょう。非常識な客として見なされることを防げるうえ、こちらの意見も正当なものとして伝わりやすくなります。
レストランで食事をした際のチップは、代金の精算時に一緒に支払うか、テーブルに現金を置いておく、または担当してくれた従業員(サーバー)に直接手渡しします。
ちなみに、アメリカではサービスの質でチップの金額が決まるため、テーブルごとの担当サーバーが決まっています。サーバーがすぐに来ないからといって、違うテーブルのサーバーを呼ぶことはトラブルの元となるので避けましょう。
レストランでチップを支払わなかった場合には、お店を出る際にチップを支払うよう、声をかけられる場合があります。
サービスに対する感想 | 目安の支払い金額 |
---|---|
・カットやカラーなどの施術を受けた場合 | 15〜20%程度 |
・料金が10USD(1,330円)以下など安価な場合 | 2〜3USD(266〜399円)程度 |
・アシスタントがシャンプーやブローなどを担当してくれた場合 | 2〜5USD(266〜665円)程度 |
美容院でカット・カラーなどの施術を受けた際には、代金の15〜20%程度のチップを支払います。ただし、比較的安価な店などで、代金が安い場合には15〜20%ではチップが少なすぎる場合もあるため、ある程度の金額を支払うように心がけましょう。
施術担当とは別に、アシスタントがシャンプーやヘアドライなどをしてくれた場合には、別途チップを渡す必要があります。良いサービスを受けたと感じる場合は、相場以上の金額を渡すことで感謝を伝えられます。
美容院では施術が終わった後にチップを支払います。チップの支払い方法は基本的にレストランと同様で、現金を手渡しするか、代金の精算時にチップを加算しまとめて支払います。
美容院では仕上がりやサービスが気に入った場合、同じ方に継続して担当してもらいたい場合もありますよね。気に入った美容師がいた場合は、チップを多めに渡しておくのがおすすめです。美容師のモチベーションアップにもつながり、良好な関係を築きやすくなります。
アメリカでのチップ文化について、相場や支払いタイミングなどを紹介してきましたが、必ずしもすべてのシーンでチップが必要となるわけではありません。チップの支払いが不要な場合は以下の通りです。
・バス、地下鉄といった公共交通機関
チップはサービスを提供してくれた特定の人に対して支払うため、公共交通機関を利用するときは必要ありません。
・フードコートやファーストフード店
フードコートやファーストフード店では食べ物を自分で席まで運ぶため、チップは不要です。
・スーパーやお土産店
スーパーやお土産店、本屋やパン屋、アパレル店などでは、基本的にチップは必要ありません。
・医療機関
病院やクリニックなどの医療機関では、チップの受け取りが禁止されている場合が多くなっています。
・行政サービス
アメリカの公務員(警察官など)や救急隊員、政府職員がチップを受け取ることは法律で禁止されています。
チップを支払う方法としては現金払いとカード払いがあります。それぞれについて解説します。
チップを現金で支払う場合は、サービスを提供してくれた従業員に直接手渡します。レストランなどでテーブルに座っている場合は、退店時にテーブルの上にチップを置いておいても大丈夫です。仮に代金をカードで支払う場合でも、チップだけを現金払いすることができます。
チップを現金で渡す場合は、小銭ではなくお札で支払います。チップはサービスへのお礼として払いますが、小銭を使うと失礼な行為と受け取られる可能性もあるため注意が必要です。
アメリカではチップが必要となる場面が多々あるので、あらかじめチップに使いやすいお札(1USD札・5USD札など)を多めに準備しておき、取り出しやすい場所に入れておくことをおすすめします。
アメリカではクレジットカードが広く普及しており、チップをカード払いすることもできます。
例えばレストランやカフェなどで食事をした場合、伝票にチップ記入欄が設けられていることも珍しくありません。チップ欄に任意の金額、または%を記入しておけば、その金額が加えられた代金がカードで支払われます。
ちなみに、お店によっては初めからチップ込みの支払額が伝票に記載されている場合もあります。二重に支払ってしまわないよう、会計時には伝票をしっかり確認しましょう。
例えば、伝票上に10%SVCのような表記があれば、すでに10%のサービス料(Service charge)が加算されています。なお伝票上の表記についてはTipまたはGratuityがチップを、Amountが代金を示しています。
チップを渡す際に使える便利な英語フレーズをいくつか紹介します。
・This is for you.
直訳すると「あなたのための分です」となり、「こちらをどうぞ」という意味になります。チップを渡す際に一言添えると丁寧な印象となります。
・Please keep the change.
「お釣りはとっておいてください」という意味です。代金よりも多めの金額を渡して、お釣りをチップとして支払いたい場合に使えます。
例えば代金が10USD(1,330円)の場合、このフレーズを使用しながら12USD(1,596円)を渡すことで、2USD(266円)をチップとして渡すことができます。
・Thank you for your help.
「手伝って(手助けして)くれてありがとう」という意味です。トラブルに対処してくれた時や、リクエストに応えてくれた時などに使えます。
・Is the tip included(in the bill)?
「チップは(会計に)含まれていますか?」という意味です。お会計の際には請求金額にあらかじめチップが含まれている場合もあります。チップが含まれているのか分からず、二重の支払いを避けたい場合は、上記のフレーズで確認してもいいでしょう。
日本では馴染みのないチップ文化ですが、アメリカでは支払うことが当たり前といってもいいほどチップ文化が根付いています。チップはサービスへの感謝の表れという側面もありますが、サービスの対価としての側面も強いため、基本的には支払い必須と考えておいた方がいいでしょう。
チップの相場は10%から20%程度ですが、満足のいくサービスを受けられたと感じる場合には、相場よりも多いチップを渡すことでお礼の気持ちを示せます。
本記事で紹介したポイントを押さえておけば、チップの金額やタイミングに悩むことなく、アメリカでの生活が過ごしやすくなりますよ。
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