コロナ禍でも留学に行く価値はある。マルタの現在の様子や語学学校の授業、現地生活で意識したこととは

橋本さんインタビュー

留学生が自身の体験を振り返る中で、等身大の留学の価値を発見するインタビューシリーズ「留学を振り返る」。

今回は留学のために休学したところコロナで延期となり、1年待機してから語学留学を実現した橋本さんにインタビューしました。

マルタでの留学生活やコロナ禍の渡航を通して感じた気付き、留学の価値についてお伺いしています。留学したいけれどコロナで難しそう、コロナ禍の海外の様子を知りたいという方は参考にしてみてください。

なお、マルタ留学についての全般的な情報は下のページでまとめているので、具体的な検討を進めたい方はチェックしてみてください。
マルタ留学

橋本蓮(はしもと れん)さん
看護師を目指す大学生。2020年4月から留学しようと計画するもコロナで延期となり、1年待機。復学するか悩むが、再度休学して2021年5月〜2022年2月に語学留学でマルタへ。現在は無事に帰国し、春からの復学に向けて準備している。

本インタビュー記事の取材はオンラインにて実施しました。

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大学を休学するもコロナで延期。再度休学してでも留学したかった理由

ーー最初に留学に興味を持ったきっかけは何ですか?

看護師になるために大学で勉強する中で国際協力といった選択肢があることを知りました。

海外で働くのも良いかもと考え始めたときに、英語が必要だからできるようになりたいと思ったのが最初のきっかけです。

万が一海外で働かないとしても、英語を学んでいると今後のグローバル化にも対応できるかなと。

ーー今回コロナ禍で留学を決断できた一番の理由は何だったんですか?

もともとコロナ前から大学在学中に留学しようとは考えていましたが、タイミングが大きいかもしれません。

私の所属する看護学部は1年生で基礎学習を終えて、2年生から専門的な学習と実習が始まります。

2年生と3年生の間で留学すると実習を中断することになるため、留学は1年生が終わるタイミングが良いと考え、2020年4月から休学して留学する予定で準備を進めていました。

プランとしてフィリピンに3ヶ月、ニュージーランドで半年の2ヶ国留学を計画していたのですが、出発直前にコロナが蔓延したことで渡航できなくなってしまったんです

結局、留学するはずだった1年を日本で過ごして、もう一度休学するか復学するか選択を迫られたのですが、ニュージーランドの国境がなかなか開かなくて。

休学して1年待ったとしても、ニュージーランドが開いているかは分からない。かといって一度復学してから留学すると、実習が中途半端になる。

その結果、1年休学して渡航できる国に留学するのが良いという結論にいたりました。休学を延長してでも、いま留学に行きたいという気持ちが強かったです。

そのときに渡航可能な上に、語学学校の対面授業が再開していたのがマルタとカナダ。

どちらも魅力的でしたが私は寒いのが苦手なため、暖かいイメージのマルタを選びました。

橋本さんインタビュー

ーマルタに向かう飛行機から見た景色

ーーそうだったんですね。コロナ禍の留学にあたって、渡航前は何が一番不安でしたか?

「もしコロナにかかったらどうしよう」という不安がもっとも大きかったです。

コロナ自体が未知のもので、症状など情報として知ってはいるものの、実際にどのようになるのかは感染したことがないため分かりません。

日本でコロナに感染してもどうなるのか分からないのに、海外となると現地の様子や医療状況もハッキリとは分からず、留学中に感染したらどうなるんだろうという不安がありました。

ただ、毎日マルタの医療状況や感染者数を調べて状況を把握するようにしていると、意外と状況が悪くないことも分かり、調べる内に不安が和らぎました。
 
現地の様子をすべて把握するのは難しいかもしれませんが、情報収集は渡航前からできる上に、不安が少なくなることもあるかと思います。

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マルタでの留学生活。現地の状況やギャップ、コロナ禍の語学学校の様子は?

橋本さんインタビュー

ーリゾート地として有名なマルタ

ーー渡航前、マルタにはどのようなイメージがありましたか?

留学前はキラキラしたリゾート地のイメージが強かったです。

現地に行くと確かに首都・バレッタは海がすごくきれいで、イメージ通りの部分が多かったです。

しかしマルタは道路や下水道が整備されていないのか、雨が降るとスニーカーがずぶ濡れになるほど道路が水浸しになります。

さらにはシャワーの水が急に止まる、熱湯か冷水かという極端な温度しか調整できないこともしばしば。フラット内でエアコンや洗濯機を一斉に使うと停電になることもありました。

日本で生活していると起きないことを経験し、マルタは日本に比べるとライフラインが安定していないんだと実感しました。

ただ、事前に「日本ほどきれいで整った国はない」と聞いていたため、嫌な思いになることはなく、現地のリアルを体感できたとも思います。

ーー日本は快適ですよね。コロナ禍において、語学学校の授業はどうでしたか?

マルタの語学学校はコロナ蔓延直後は休校となっていましたが、私がマルタ留学を決断した2021年春頃には留学生の受け入れや対面授業を再開していました。

対面授業では教室のサイズに合わせて1クラスの人数を変える、学校内ではマスクを絶対着用する、グループワークやペアワークは距離を開けて話すなど感染対策は徹底しています。

ただ完全に感染リスクがないとはいえないため、渡航したときは新規感染者が増えるとオンライン授業に移行するなど、授業形態を変えながら授業をしていました。

実際に私も感染対策をしながら対面のグループレッスンを受けていましたが、到着してすぐと夏の合計2回、オンラインに移行した時期もあります。

ーーマルタ全体のコロナ対策はいかがでしたか?

語学学校では感染対策として「マスクは絶対着用」などルールを設けていましたが、個別に見ると楽観的な人もいるような印象を受けました。

例えば日本では、自分が風邪を引いていなくても予防としてマスクをするなど、もともとマスクを使う習慣があります。

対して海外ではマスクを着用する習慣が日本ほどないからか、マスクを着けることに抵抗を感じ、鼻が見えていたり顎にかけたりしている人もいました。

特に夏場は暑さもあって、マスクをしっかり着けられていない人が多かったです。

橋本さんインタビュー

ーマルタの街並み

その中でも私はコロナに絶対感染したくないこともあり、マスクは必ず着ける、アルコール消毒を常に持参することを徹底していました

また相手がマスクを外していても自分は絶対に取らない、そもそもマスクをしっかり着けていない人とは距離を取るといったことを心がけていましたね。

コロナ禍の留学だからこそ求められる意思表示。他の留学生の姿が刺激に

ーーコロナ禍に留学したからこそ起きたことはありますか?

コロナ禍の留学では意思表示が必要な場面がたくさんありました。

日本人はもともと相手にどう思われるか気になって、発言するまでに考え込んだり飲み込んだりすることがあるかと思います。私もそのような一面があり、元から意見をハッキリ言える方ではありません。

でもコロナ禍では、自分の身を守るために気になることは言う必要があります。

例えば語学学校の授業中、ペアワークの相手が息苦しさから鼻を出してマスクを着けていたことがあったんです。少し悩みましたが「ちゃんとマスクを着けてもらっても良い?」と自分の身を守るために伝えられるようになりました。

また留学中、先に帰国する友達のお別れ会がナイトクラブで開催されたことがあったんです。混雑している場所だろうから怖いなと感じて、私は「行きたいけれど、いま行くべきではないと思うんだ」と断ったこともあります。

コロナに対する価値観は人それぞれな上に、慎重さも異なります。

だからこそ自分の中でこれはダメというラインを決めて守る。そして相手に「Yes」「No」でしっかりと伝える必要性は、コロナ禍だからこそあったように思います。

ーー自分の意見を伝えられるようになったのは、何か心境の変化があったのでしょうか?

欧米圏からの留学生の姿が大きく影響しています。

授業中に分からないことがあると、日本人は授業を止めてしまうからと質問をしなかったり、後で個別に聞いたりするかと思います。

対して欧米の方はあまり気にせず「これはどういうこと?」と、分からないことをその場で質問していたんです。

授業を止める心配をしていたものの、いざ止まっても自分はあまり気にしていないと感じて。自分が思うほど周りは気にしないし、気にしなくて良いことなんだと気付きました。

しっかりと意思表示する姿を見たことで、自分も「いまの言葉の意味が分からなかったから教えてください」など、その場ですぐに聞けるようになりました。

留学生活を通した気付きがあると、同じ授業でも得られるものは増えるようにも感じます。

橋本さんインタビュー

ーマルタで仲良くなったご友人と(右から2番目が橋本さん)

ーーなるほど。意思表示の大切さは通常の留学でも気付きとしてありますが、コロナ禍はより意識するものかもしれませんね。

その他にもコロナ禍の留学だからこそ、自分で情報を集めるリサーチ力、責任感も身に付きました。

例えばコロナが一時的に収まっていた10月頃、知り合いのいるドイツに遊びに行ったことがありました。

ワクチン証明書などコロナがあるから必要な書類があり、大変だけれど提出しないと旅行できない。何が必要なのかも自分で調べるしかない。

できる限りトラブルや感染リスクを防ぐために、ネットで情報収集をしたり在ドイツ大使館に問い合わせたり、通常の留学生活より確認することが多かったです。

自分がすると決めたことだから、行動する責任も自分にあります。大変ではありましたが、だからこそ責任感が芽生え、どうやったら実現できるかと考える力も身に付きました。

コロナがなければもっと気軽に遊びに行けましたが、反対にリスクを考えたり調べたりする機会が生まれたとも思います。

橋本さんインタビュー

ー留学中に遊びに行ったドイツにあるベルリンの壁

ーーコロナ禍だと海外に行くのは感染リスクがある上に、英語学習であれば日本でもできるようになり、わざわざ現地に行かなくても良いと考える人もいるかもしれません。そのような状況でも、現地に行く価値はありますか?

もちろん十分な情報収集や感染対策は必要ですが、留学には現地でしか体験できないこと、気付けないことがたくさんあります。

個人的には日本から離れた国に留学し、習慣や文化、育った環境が違う人と出会って新たな価値観を知れたことが大きいです。

例えば、語学学校のクラスメイトに3週間ほどの短期留学をしているヨーロッパの人が多かったんです。

留学の理由を尋ねると「高校を卒業したけれどやりたいことが見つからない。でも英語を勉強したいから、とりあえずマルタに英語を学びに来た」という子もいて。

日本だったら高校を卒業したら就職や大学進学など、ルールではないものの何かしないとダメという感覚があります。そのような固定概念があることを話を聞いたときに初めて自覚したんです。

経験者に話を聞いたり体験談を読んだりして知ることもできますが、現地でコミュニケーションを取る中で自分がなんとなく感じて学ぶことがたくさんありました。

特に私は留学する1年前からオンライン英会話を続けていたため、海外の人と関わりがなかった訳ではありません。それでも現地生活を通して学べることは多く、その気付きは実際に留学しないと分からなかったです。

実体験として気付く方が自分の中に落とし込みやすく、その価値はコロナ前と比べて海外に行きづらくなった現在も変わらないと感じます。

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コロナ禍の留学を悩む人へ。思い切りと状況をポジティブに捉える力を持とう

橋本さんインタビュー

ーインタビューでマルタ留学を振り返る橋本さん

ーー留学に行きたい、でもコロナで不安という人が留学するために必要な心構えはありますか?

まずコロナ禍で留学する場合、ある程度の思い切りが必要です。誰しも不安はありますが「もし感染したらどうしよう」と万が一をずっと気にしていると、なかなか行動できません。

ある程度の思い切りを持ちつつ、コロナ禍に留学しているリスクへの理解と自覚もあると良いのかなと感じます。

リスクを理解していると対策もできますし、自覚が強ければ強いほど何かあったときに、それでも自分がいま留学することを選んでここにいるんだと前向きに考えられます。

私が通っていた語学学校の場合、自分がどれだけ感染対策を徹底していても、ルームメイトやクラスメイトがコロナに感染したら2週間は隔離となり、現地にいながらもオンライン授業に移行します。

感染リスクがあり、状況によって授業形態が変わるのは通常の留学なら起きないことで、コロナ禍ならでは。しかし「どうして感染したんだろう」「なんで私ばっかりこんな目に遭うの?」と嘆いても状況は変わりません。

大事なのはその後どうするか。リスクがあることを分かった上で渡航していると「ここからどうしようかな」と気持ちを切り替え、ポジティブに考えることも可能です。

気を付けながら「コロナ禍でも何ができるか?」と楽しんだ方が得ですし、私は楽しみたいです。

ーー最後に、留学を悩んでいる人に向けてメッセージをお願いします。

コロナ禍である以上、いまが留学のベストシーズンとは言い切れず、かといって渡航できない訳でもありません。

正直に話すと、コロナがなければマルタから周辺の国にもたくさん遊びに行けたと思いますし、留学生活がさらに充実していたかもと考えることもありました。

ただ制限がある中でも、留学を充実させるために自分ができることを考えて行動することが重要です。実際に留学して、コロナ禍だからこその学びも確実にあると感じました。

感染リスクを考えてもう少し先に留学するのも1つの選択肢ですが、コロナ禍に留学したからといってネガティブな出来事ばかりではないとお伝えしたいです。

ーー橋本さん、ありがとうございました!


【編集後記】
コロナの蔓延によってオンライン留学などが誕生し、日本でも留学を体験することが十分可能となりました。

しかし現地生活や留学生との交流を通して分かること、日本での生活では得られない気付きもたくさんあります。

またコロナ禍の留学ではハッキリと意思表示すること、自分で「いまこれをすべきか?」と考えることなど、意識すべき点も変わります。通常の留学よりは意思表示や思考力が求められることは、コロナ禍だからこその経験です。

感染リスクはありながらも対策を徹底し、状況をポジティブに捉えて楽しもうとする橋本さんの考え方は、普段の学生・社会人生活にも大いに役立つと感じました。

コロナ禍に留学しているという自覚を強く持ちつつ、現地で見聞きしたことを素直に自分の考えや行動に取り入れる。現地に渡航する価値や経験はコロナ前も現在も変わらないと感じるインタビューでした。

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    この留学ブログを書いた人

    モリキアユミ

    モリキアユミ

    1992年生まれ、京都府出身のフリーライター。大学卒業時に就職を蹴って、24カ国・50都市の世界一周を実行し、旅の途中からそのままライターへ。現在はタイと日本を行ったり来たりしています。オーストラリア留学とセブ島留学の経験あり。

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