はじめまして。理学療法士のKotaroです。
私は現在大学院を休学、トビタテ留学JAPAN日本代表プログラムの7期生として2017年8月からグランドキャニオンで有名なアメリカ・アリゾナ州のメサ・コミュニティカレッジに留学しています。アメリカではコミカレで授業を受けながら、研究活動、病院実習、ボランティア活動などを行っております。
このコラムでは私がなぜアメリカに留学したのか、コミカレでの授業の様子、病院実習やボランティア活動など大学外での活動まで幅広く皆さんにご紹介できればと思います。
なお、アメリカ留学についての全般的な情報は下のページでまとめているので、具体的な検討を進めたい方はチェックしてみてください。
アメリカ留学
私は高校を卒業するまで世界一の豪雪地帯とも噂される新潟県上越市という地域で育ち、高校時代は勉強そっちのけ、坊主頭で日々バスケットボールの練習に明け暮れていました。部活を引退して、大学受験モードに切り替わり、志望校や就職に関して考えるうちに、なんらかの形でバスケに関われる仕事に就きたいと思いました。
バスケの本場といえばアメリカ、NBA。現場でスポーツトレーナーとして選手のコンディショニングや怪我処置をしている人達がとても輝いて見え、将来はこんな場所で働けたら良いなあとその当時から漠然とアメリカへの憧れを持っていました。
スポーツトレーナー = アメリカという方程式はずっとこの頃から頭にありました。
進路を調べているうちに、ややトレーナーに似ている職業である理学療法士という仕事があることと(今となっては全く別の仕事だと気づきましたが)、理学療法士の資格を活かして、スポーツ現場で活躍している事例があることを知りました。
母親が看護師であり医療の世界にも少し関心があったので、その当時は理学療法士とスポーツトレーナーの違いなども曖昧でしたが、医療現場でもスポーツ現場でもどちらでも働ける可能性があるなと思い、理学療法士の養成校に進学することを決めました。
無事第一志望の大学に合格し、豪雪地帯の田舎から都会の名古屋へ。スポーツトレーナーとしての経験を積みたかったので、学生トレーナーを募集していたアメフト部に入部し、4年間毎日部活に明け暮れました。
その時は留学のことは考えていませんでしたが、アメフトの本場はもちろんアメリカ。最高峰リーグNFLの試合の中で活躍している医療スタッフの方々を観て、アメリカへの憧れが再燃している感じはありました。
このように大学4年間のほとんどはとにかく学校の授業、部活、アルバイトに明け暮れていたので、アメリカへの憧れはありましたが、具体的になんらかの形で留学するというイメージはなく、大学院に進学して時間ができたら行こうかなくらいの甘い考えでした。
実際に留学しようと具体的に考えたのは、大学院1年目の時。アメフト部でのトレーナー活動や、クリニックでの理学療法士としての勤務を通じて、自分自身が選手や患者さんに対して行っていることは本当に根拠があるのか?ということをずっと考えていました。
やや専門的に説明すると、エビデンスに基づいた医療(Evidence Based Medicine: EBM) ができていないなと感じていたのです。
EBMとは、研究によって得られたデータなどを基に、「どのような治療をどのくらい行うと症状がどれだけ改善するか」を把握し、個々のクライアントの価値観、医療従事者の経験、環境などに合わせて適切な医療をおこなうための行動指針の一つです。
例えばあなたが腰痛で困っていてクリニックを受診したとします。医師や理学療法士に対して「あとどれくらいで痛みは改善しますか?」と聞いた際に、「やってみないと分からない」や根拠もないのに「ストレスが原因です」などと言われたらあまりよい気持ちはしないと思います。そして自分はどうかと言われた時に自信が持てなかったのです。
もちろん、○週間で治りますと断言することは難しいですが、できる限り再現性があって根拠のある介入方法がベースになることが重要と考えています。どこかそれらを学べる環境はないかと探しているうちに、アメリカの大学院を見つけました。Doctor of Physical Therapy program (DPT program)というアメリカの理学療法士を養成する大学院博士課程です。
大学院進学のためにはアメリカの大学で単位を満たす、医療施設で見学をおこなうことが条件なので、まずは日本の大学院を休学してアメリカのコミカレ(2年制の短大)で授業を受けることに。
4年制の大学も魅力的でしたが、授業料が高いことやそもそも出願に間に合わないという事実があり、コミカレを選択しました。
また、この時期にちょうど大学でトビタテ留学JAPAN日本代表プログラムの奨学生を募集していて、主にボランティア活動やインターンシップなどの実践活動に対して奨学金が給付されるとのこと。
せっかくアメリカにいくならコミカレで授業を受けるだけでなく、現地で病院実習や研究活動もしようと思い留学計画に組み込んで応募しました。応募締め切りの2週間前にプログラムを知ったので、かなり焦りましたね。
上記のように、留学目的自体はある程度自分の中で固まっていたのですが、どこのコミカレに進学するか、医療機関の見学先や研究活動先はどのように確定させるか具体的なプランかつコネクションが全くなかったので、かなりバタバタしていました。
渡米を思い立ったのが2月上旬、その2週間後には奨学金応募締め切り、5月中旬にはコミカレへの出願と奨学金の面接、ビザの手配などもして8月上旬にはもう渡米していなければならないという状況でした。
コミカレに関しては、アメリカ大使館で開催されている留学説明会や大学の留学支援室に相談して詳しい人から情報を収集。医療機関や研究活動先に関しては海外のホームページや論文を読んで、自分の学びたい分野にマッチしている施設に直接メールで受け入れの交渉を進めていました。
その中で見つけたのがアリゾナ州フェニックスにある施設。理学療法士やアスレチックトレーナーが勤務していて、NFL選手やメジャーリーガーもトレーニングや治療に訪れます。施設には様々なトレーニングマシンや人工芝の室内グラウンドがあり、ホームページを観て「ここだ!!」と感じました。
しかもその施設のオーナーと理学療法士の方が来日して講演されるとのこと。実際にお話を聞いて本当に熱い想いを持ってクライアントと向き合ってお仕事をされていると感じ、ぜひ施設に伺いたいですと見学のお願いをしました。
まだその施設に受け入れていただけるかはその時点ではわかりませんでしたが、なるべく施設に近いコミカレに行こうと思い現在の進学先メサ・コミュニティカレッジを選びました。
渡米を思い立つまでは、確かに金銭面や語学力など漠然とした不安は少なからずありました。ただ情報収集をしているうちに、どれくらいの授業料や語学力が必要とされるのか、そもそもコミカレってどのような場所なのかということが具体的になり、「思っていたほどハードルは高くないな」と思うようになりました。
インターネットでも情報は溢れていますが、多過ぎてどれを信用していいのか分からない時もあります。そんな時はその道のプロや経験者に聞くのも一つの手段。無料の留学相談会は増えておりますし、ブログやSNSを通じて留学経験者にメッセージしてみると親切に質問に答えていただける方は多い印象です(もちろんモラルやマナーを守った上で)。
渡米を思い立ったのが2017年の2月、周りの方々の協力もあり、6月にはトビタテ留学JAPAN日本代表プログラムの7期生として採用していただき、コミカレからも入学許可証をいただきました。
それからは航空券の手配やビザの申請、アパートの引き払いや国民保険や年金の手続きなど日々何かの手続きをこなしていました。一応大学院生なので、授業や研究活動、非常勤の仕事にも追われていて、渡米直前までこれから留学に行くんだという実感は全くなく、諸々の手続きの不備と雑務を後輩の大学院生にしっかり残したまま8月になります。
そして気づけば羽田空港にいて、最後に空港でラーメンを食べ、飛行機で寝ている間にもうアリゾナに着いていたという感じです。
アリゾナという全く雪が降らず年中暖かい気候、物価がそれほど高くないという環境も雪国田舎で育った僕には魅力的でした。ただ夏は気温は50℃近くまで上昇。いろいろな意味で「あつい」場所です。
コミカレで授業を受けながらもアリゾナ州の様々な医療施設と交渉し、結果的には先ほど紹介したフェニックスにある施設からも見学の受け入れをいただき、その時はとても喜びました。
NFLのキャンプも見学先で偶然行われていて、NFL選手と一緒に話して、トレーニングできたのは本当に幸運でした。アメフト部の仲間と毎年一緒にスポーツバーで観戦していたスーパーボウルにでていた選手と今、話している。なんかびっくりし過ぎて現実味がありませんでしたね。
大学にあるグランドで行われているアメリカンフットボールの試合の様子です。8月から始まるシーズンの週末は地域の方や学生が観戦にきます。
またアリゾナからは遠く離れていますが、インディアナ州インディアナポリスにある病院で4週間実習させていただきました。膝関節鏡手術やACL再建術に関して世界的に高名なドクターが開設した、多くのアスリートが訪れる施設です。その施設が発表している論文などを読んで興味を持ち、時間はかかりましたが、担当者の方とメールで交渉し受け入れ許可をいただきました。
研究活動先に関してはメールだけではなかなか話が進まず、これまたアリゾナから離れたワシントンD.Cで開催された国際学会に参加していろいろな大学の研究者に直接直談判して受け入れの許可をいただいた形となりました。
どの施設との交渉もギリギリのスケジュールで、もう少し早めに情報を収集して計画的なプランを練っておけばとも思いましたが、とりあえず見切り発車で今回の留学が実現したので、締め切り2週間前のあの日、あきらめなくてよかったなとも思います。結果論ですけどね(苦笑)。
大学にあるコンサート会場で定期的に演奏会が行われている様子。
日本にいた頃もオンライン英会話やTOEFLの勉強をしていたので、少しは英語が通じるかなと考えていました。大学院に進学してからも留学生とお話したり、少しアカデミックなディスカッションをしたり。下手なりに頑張って英語を使っていたように思います。
ただ、アメリカに来て最初に入ったスターバックスで早速洗礼を受けました。Coffeeが全く通じない、あの手この手で「コフィー?カフィー?こーふいー?」などと発音を変えてみるも全く伝わらず、アイスコーヒーを一杯頼むのに数分かかりました。
その後もミルク、砂糖入れますか?も全く聞き取れず、ブラックがよかったのですが、あまーい、アイスコーヒーを受け取りました。
これから大学で勉強するというのに、コーヒー1杯すらまともに頼めないのかと落ち込みましたね(笑)。大学の授業や病院実習でも同じような状況で、自分の知っている英語は英語じゃないなと感じました。
奨学金への応募、大学への出願、各種施設との交渉、どれも本当にバタバタしていて、あまり計画通りに進んだものはありませんし、しっかり調べておけばよかったと思うことがあります。
しかし、思い切ってとにかく気になった場所にメールを送ってみる、受かる自信があるわけではないけど奨学金やその他のプログラムに応募してみるなど行動してみることも大事だと思います。
留学先は無数にありますし、調べているうちに何かの締め切りが過ぎてしまった、あっという間に時間がたってしまった、なんてことも多かったです。最低限の情報を仕入れたら見切り発車で行動、後のことは走りながら考える。そして気がついたら自分の行きたい場所についていたなんてこともあると思います。今回の私の留学がそうでした。
今回は現在私が渡米するまでの流れを紹介いたしました。今後はコミカレでの授業、大学以外での活動、トビタテ留学JAPANなどに関して詳細を紹介していければと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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