アメリカのチップ文化は？知っておきたい相場やルール、計算方法を紹介！

アメリカをはじめとする欧米諸国では、サービスの対価としてチップを払う文化があります。日本ではチップの文化がないため、渡すタイミングや方法に悩むことがあるかもしれません。旅行や留学の予算を見積もる際に、チップの相場を知っておきたい人も多いのではないでしょうか。

今回はアメリカに4年の在住経験がある筆者が、アメリカのチップ事情について解説します。チップを渡す理由から相場、使える英語フレーズだけでなくよくある質問にもお答えします！

なお、アメリカの観光情報については下のページでまとめているので、おすすめの観光スポットや人気の料理などを知りたい方はチェックしてみてください。
アメリカのおすすめ観光スポットやイベント、グルメなどを紹介
※記事内ではアメリカドルをUSDと表記し、為替レートには2025年10月31日時点での情報を参照し、1USD＝155円で計算しています。

アメリカのチップ事情

チップ文化があるかどうかは国によって異なります。例えば日本や中国、韓国などのアジア諸国ではチップを渡す文化はありません。

一方、アメリカではチップの支払いがマナーとして根付いています。レストランやホテルなどではチップを渡すことが前提のため、チップの支払い金額が相場よりも少なかったり、支払いを忘れたりするとトラブルの原因になる可能性があります。

アメリカでチップを払わなければならない理由

アメリカではサービスにも値段が付くという考えに基づき、チップを支払う文化が根付いています。

チップの金額はサービスへの評価を反映していると捉えられるため、金額があまりに少ない場合、従業員のサービスへの意欲も失われます。サービスの質の低下につながれば、顧客にとっても望ましい状況とはいえません。

また、アメリカではチップは給与の一部に含まれています。お客さんからチップが支払われることを前提に、雇用元からの給与が決められている場合も。特にチップ文化のあるサービス業においては、従業員にとってチップが重要な収入源になっているという一面もあります。

チップがなければ従業員が収入面で苦しくなることも考えられるため、基本的にチップは必要となっています。

年々相場が上昇！「チップフレーション」とは

近年、アメリカでは「チップフレ―ション（Tip-Flation）」という言葉が広がりつつあります。チップ（Tip）とインフレーション（Inflation）という言葉を掛け合わせた造語で、おもにコロナ禍以降に使われるようになりました。チップの相場が上昇しているという意味合いで使われています。

チップフレ―ションという言葉が使われるようになった理由のひとつとして、コロナ禍で生活が厳しくなったサービス業の人たちに対して人々が多めにチップを渡すようになったり、それに乗じて従業員側や店側もチップを期待したりするようになったことが考えられます。加えてコロナ禍でキャッシュレス化が進み、クレジットカードやアプリでの支払い時に端末の画面をとおして「チップをいくら払いますか？（How much should I tip?）」とチップを要求しやすくなったのも理由といえるでしょう。

円安になればなるほどチップを支払う額も増える？

アメリカのチップ文化について考える際に、切っても切り離せないのがアメリカのドル高と日本の円安の傾向です。ドルで支払うチップの金額が同じでも、日本円換算すれば、円安になればなるほど実質的に支払う金額は増えます。日本円とアメリカドルの最新のレートをこまめに把握しておくと、チップを支払う際の参考になるはずです。

チップを支払わないとどうなる？

チップは支払わなくても罰則はありません。しかし、きちんとサービスを受けたにもかかわらずチップを支払わなかったり、極端に金額が少なかったりするとトラブルが生じる可能性もあります。

アメリカのサービス業で働く人々にとっては、チップは支払われて当然だと認識されています。きちんとサービスを提供しているにもかかわらずチップが少なければ、従業員が不満に思い、場合によっては文句を言われることもあります。

また、チップを払わなかったり金額が少なかったりすると、サービスの対価を支払わないと見なされるため、サービスの質や接客が低下する可能性もあります。

サービスに対するチップの割合めやす

では、一体どのくらいの金額をチップとして支払えばよいのでしょうか。サービスに対するチップの目安を割合で紹介します。

アメリカのチップの相場は、最低でも10％からだと考えましょう。なお、10％の割合ではサービスに対して不満があったと受け取られてしまいます。

特にサービスに不満がない場合には20％程度のチップを支払うのが一般的です。

満足度の高いサービスを受けた場合には、25～30％のチップを支払うのが一般的です。接客が良いと感じたり、何か特別な対応やサービスをお願いしたりした場合にはチップを多めに支払うと良いでしょう。

上記は一般的なチップの金額のイメージです。ただし、チップが多いか少ないかの考え方は、お店のグレードにも左右されます。例えば、カジュアルなお店なら15％でも問題ない場合がある一方で、高級店では安すぎると捉えられてしまうこともあります。

アメリカで支払うチップの相場とタイミング

シーン別に支払うチップの相場と、支払いのタイミングについて具体的に紹介します。

アメリカのタクシー・Uberのチップは？

ドライバーに荷物を運んでもらった場合には上記に加え、1つの荷物につき1USD（約155円）を足すことが一般的です。

Uberの場合は、行き先の指定から支払いまでアプリ上で完結するため、基本的にチップを手渡しする必要はありません。チップを渡したいと感じたなら、乗車後にアプリ上で支払うことが可能です。支払うチップの金額も自由に設定できます。チップの支払いがうまくできるか不安があれば、Uberを利用するのも一つの方法です。

支払いタイミング

タクシーを利用した際には、タクシー料金の支払いと同時にチップを渡します。料金の支払いの際にお釣りがあれば、お釣りを受け取らずチップとしてそのまま渡すとスムーズです。

Uberでは乗車後にアプリ上からチップを支払うことができます。Uberのチップはシステム手数料がかからず、全額が担当ドライバーに支払われます。

アメリカのホテルではチップがいらない？

アメリカのホテルに泊まった際もチップを支払いましょう。支払う金額は受けたサービスの内容によって変わります。

コンシェルジュへの相談については、簡単な質問程度ならチップを渡す必要はありません。何かの予約をとってもらった場合などにはチップを支払い、難しいリクエストに応えてもらった際には20〜50USD（3,100〜7,750円）程度の金額を渡すケースもあります。

支払いタイミング

ドアマンやベルボーイ、コンシェルジュやウェイターからのサービスを受けた場合には、その場でチップを支払います。バレーパーキングの車を受け取った際には、スタッフが車を持ってきて運転席から降りたタイミングでの手渡しが適切です。

一方、ハウスキーパーは外出中にベッドメイキングや掃除をするため、直接顔を合わせる機会があまりありません。ベッドサイドや枕の上など、掃除する際に目につきやすい場所に置いておくといいでしょう。

アメリカのレストラン・カフェ・バーで支払うチップ

レストランやバー、カフェなどのお店では通常20%程度、サービスへの満足度が高ければ20%以上のチップを支払うのが一般的です。サービスに不満がある場合でも、チップは最低15%は支払うようにしましょう。

あまりサービスが良くないと感じたとしても、チップは労働の対価として通常通り支払うのがマナーです。

サービスへの不満点はチップを少なく支払って示すのではなく、お店やマネージャーに苦情として伝えましょう。非常識な客として見なされることなく、こちらの意見をしっかりと伝えられます。

支払いタイミング

お店で飲食をした際のチップは、代金の精算時に一緒に支払うか、テーブルに現金を置いておくのが一般的です。または自分のテーブルを担当してくれた従業員（サーバー）に直接手渡しします。

ちなみに、アメリカでは受け取ったチップの金額を可視化するため、テーブルごとの担当サーバーが決まっています。違うテーブルのサーバーを呼ぶとトラブルの元になるので避けましょう。

なお、チップを支払わなかった場合には、お店を出る際にチップを支払うよう声をかけられる場合があります。

アメリカの美容室でもチップを支払う！？

アメリカでは美容院もチップを支払うシチュエーションとして挙げられます。美容院でカット・カラーなどの施術を受けた際には、代金の20%程度のチップを支払います。

施術を担当したスタッフとは別に、アシスタントがシャンプーやヘアドライなどを担当した場合には別途チップを渡す必要があります。良いサービスを受けたと感じる場合は、相場以上の金額を渡すことで感謝を伝えましょう。

支払いタイミング

美容院では施術が終わった後にチップを支払います。チップの支払い方法は基本的にレストランと同様で、現金を手渡しするか、代金の精算時にチップを加算しまとめて支払います。

美容院では仕上がりやサービスが気に入った場合、同じスタッフに継続して担当してもらいたい場合もありますよね。気に入った美容師がいたら、チップを多めに渡しておくのがおすすめです。美容師のモチベーションアップにもつながり、その後も安心して施術をお願いしやすくなるでしょう。

チップの支払いが必要ないシーン

アメリカにはチップ文化がありますが、中にはチップの支払いが必要ないケースもあります。チップの支払いが不要なのは以下のようなシチュエーションです。

・バス、地下鉄といった公共交通機関
チップはサービスを提供してくれた特定の人に対して支払うため、公共交通機関では必要ありません。

・フードコートやファーストフード店
フードコートやファーストフード店では食べ物を自分で席まで運ぶため、チップは不要です。チップを払う必要がない飲食店でも、通常のメニューにはない特別な料理を注文したり、誕生日用の演出を依頼したりして、特別な対応を受けた場合には少しだけ渡すとスムーズです。

・スーパーやお土産店
スーパーやお土産店、本屋やアパレル店などの販売店では基本的にチップは必要ありません。

・医療機関
病院やクリニックなどの医療機関では、チップの受け取りが禁止されている場合があります。

・行政サービス
アメリカの公務員（警察官も含む）や救急隊員がチップを受け取ると賄賂とみなされるため、法律で禁止されています。

チップの支払い方法

チップを支払う方法には現金払いとカード払いがあります。

現金払い

チップを現金で支払う場合は、サービスの提供を受けた従業員に直接手渡します。レストランなどでテーブルに座っている場合は、テーブルの上にチップを置いて退店してもかまいません。仮に代金をキャッシュレス決済で支払う場合でも、チップだけを現金払いすることができます。

チップを現金で渡す場合は、小銭ではなくお札で支払います。チップに小銭を使うと失礼だと受け取られる可能性もあるため注意が必要です。

アメリカではチップが必要な場面が多々あるので、あらかじめチップの支払いに使いやすいお札（1USD札・5USD札など）を多めに準備し、取り出しやすい場所に入れておくことをおすすめします。

キャッシュレス決済

アメリカではキャッシュレス決済が広く普及しており、チップをクレジットカードやスマートフォンのアプリで支払いもできます。

例えばレストランやカフェで食事をした場合、伝票にチップ記入欄が設けられていることも珍しくありません。チップ欄に任意の金額や%を記入しておけば、その金額が加えられた代金がカードで支払われます。

キャッシュレス決済の際、電子端末にカードやスマートフォンをスキャンまたはタッチする方法も多く普及しています。端末にチップを何%分支払うかを選択する画面が出てきたら、希望する数字を選択して料金と一緒に支払いましょう。画面が表示されない場合は、従業員にいくら支払うかを伝え、端末を操作してチップ込みの金額を表示してもらいます。

チップの二重払いに注意！

お店によっては、伝票に記載されている支払い金額に最初からチップ（サービス料）が含まれていることも。その場合は別途チップの支払いを行う必要はありません。

例えば、伝票上に10%SVCのような表記があれば、すでに10%のサービス料（Service charge）が加算されています。表記があるかどうか分からなければ、サービス料が料金に含まれているかを従業員に確認しましょう。

地域によって違う？アメリカのチップ相場

チップ文化はアメリカ全土にありますが、州によってチップの相場に差があることも。TradingPediaとMarketsChainが2025年に実施した調査によると、アメリカ東部の大西洋に面したデラウェア州が最もチップの相場が高いという結果が出ました。ほかにもインディアナ州やウェストバージニア州などがチップの相場が高い州として挙げられています。(※1)

地域間で差が出やすい理由として、その土地の独自の税制度や物価などが影響していると考えられます。

チップを渡す前に！役立つ計算アプリ・サイト

チップの金額は15％、20%といった割合で決めるケースが多く、計算が面倒だと思う人もいるかもしれません。スマートフォンの電卓アプリを活用するのも一つの方法ですが、チップの計算に特化したアプリやサイトを使うと便利です。

・かんたん！チップ計算機

かんたん！チップ計算機は、簡単にチップの計算ができるiPhone向けアプリです。料金をアプリに打ち込み、希望するパーセントのボタンを押すだけでチップの金額がわかります。パーセントは10％から5種類を選ぶことができ、15％や18％といった暗算の難しい割合もスムーズに計算できます。

アプリの利用にデータ通信の必要がないのは嬉しいポイント。通信費をなるべくかけたくない人にもぴったりです。

・チップ計算 - 高精度計算サイト - keisan

アプリではなくウェブサイトを使いたい人にはチップ計算 - 高精度計算サイト - keisanがおすすめです。料金とチップ率を数字で入力し、計算ボタンを押すだけでチップの金額が表示されます。一度入力した数字の保存やクリアも簡単です。

また、複数人でサービスを利用した場合に、分割して支払うのにも便利です。人数にあわせて分割した金額を表示することができます。

チップを渡す際の英語フレーズ

チップを渡す際に使える便利な英語フレーズをいくつか紹介します。

・This is for you.
直訳すると「あなたの分です」となり、「こちらをどうぞ」という意味で使えます。チップを渡す際に一言添えると丁寧な印象です。

・Please keep the change.
「お釣りはとっておいてください」という意味です。代金よりも多めの金額を渡して、お釣りをチップとして支払いたい場合に使えます。

例えば代金が10USD（1,550円）の場合、このフレーズを使用して12USD（1,860円）を渡すと、2USD（310円）がチップであると相手に伝わります。

・Thank you for your help.
「手伝って（手助けして）くれてありがとう」という意味です。トラブルの対応をお願いしたときや、リクエストに応えてくれたときに使えます。

・Is the tip included（in the bill）？
「チップは（会計に）含まれていますか？」という意味です。お会計の際には請求金額にサービス料として、チップ分の金額が含まれている場合もあります。チップが含まれているか分からなければ上記のフレーズで確認するのがおすすめです。

アメリカのチップに関するFAQ

チップ文化は日本では一般的ではないため、不安がある人も多いのではないでしょうか。次は、初めてアメリカに行く人が感じやすいチップに関する疑問について解説します。

チップを計算するときは税込？税抜？

チップは、基本的に税抜の金額を基準に計算します。チップは受けたサービスに対して支払うもので、一般的に税金はサービスそのものではないと考えられているためです。

簡単なチップの計算方法はありますか？

計算を間違えずにスムーズに行うには、やはりスマートフォンのアプリを活用するのが確実です。

アプリを使わずにその場で計算するなら、税金の割合を倍にして考える方法も便利。伝票や端末の画面で税金の%と金額を確認し、その金額を2倍にします。例えば税金が8%であれば、2倍するとチップは18%として計算できます。

ほかに、10％や20%と暗算しやすい割合でチップを計算するのもおすすめです。チップの計算に使える方法をいくつか把握しておくと、焦らずに支払いができるでしょう。

ほかの国に比べてアメリカのチップ文化はどう？

チップを支払う文化は、アメリカやカナダ、ヨーロッパなどおもに欧米諸国に根付く文化です。その中でもアメリカは特に、チップ文化が当たり前のものとして認識されています。同じチップ文化でも、国や地域によって特徴があると知っておきましょう。

例えばヨーロッパでチップを払う場合は1ユーロコインなどの小銭を使うこともできますが、アメリカでは紙幣でないと失礼だとされています。ヨーロッパのレストランやカフェではサービス料込みの金額が請求されることが多く、アメリカと比べて追加でチップを支払う機会が少ないと感じるかもしれません。

このように、同じチップ文化があっても国や地域によって特徴があると知っておきましょう。

チップは税金の対象ですか？

チップを支払う側は税抜の金額からチップの支払い額を計算するのが一般的ですが、受け取った側はチップの額に対して所得税を納める必要があります。また、雇用主側も従業員が受け取ったチップの額を記録・保存し、給与税を計算して源泉徴収する必要があります。

しかし、2025年1月にアメリカ大統領に就任したドナルド・トランプ氏は、チップの課税を廃止し受け取ったチップを100％収入にするという方針を発表しています。今後、状況によってはチップが税金の対象にならなくなるかもしれません。

チップの支払いを忘れたときの対処法

キャッシュレス決済の際に端末でチップを求める画面が出てきたり、店員側から「チップはいくら支払いますか？」と聞かれたりすることも多いため、チップの支払いを忘れることはなかなかないかもしれません。

もし、退店前までにチップを支払い忘れたと気づいたら、その旨を従業員に伝え、現金でチップを支払いましょう。会計後のチップの支払いはキャッシュレス決済で対応できないこともあります。もし退店した後に思い出した場合、よく行くお店なら次回の来店時に事情を説明して多めにチップを渡すようにしましょう。

これらの方法で対処できないときは、忘れたものは仕方がないと割り切り、次回以降気をつけるようにするしかありません。

支払いを忘れた際の対処法があっても、基本的にチップの支払いは忘れないように気をつけるのがマストです。特にキャッシュレス決済の場合、伝票のチップ支払い額の欄を空欄のまま従業員に渡してしまうと、相手側で勝手に金額を記入されてしまう可能性もゼロではありません。支払う意思があれば、記入や支払いは忘れないようにしてください。

まとめ

日本ではなじみがなくても、アメリカでは支払うことが当たり前といってもいいほどチップ文化が根付いています。チップはサービスへの感謝を表すだけでなく、サービスの対価として支払う面も強いため、基本的には支払いが必須だと考えておいた方がいいでしょう。

チップの相場は20%程度ですが、満足のいくサービスだったと感じる場合には、相場よりも多いチップを渡すことでお礼の気持ちを示せます。

支払う際のポイントを押さえておけば、チップの金額やタイミングに悩むことなく、アメリカ滞在を楽しめるでしょう。

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